【国賠訴訟】情報公開請求権抑圧事件に対する国賠訴訟の訴状
渋谷区議会議員・堀切稔仁が提訴した情報公開請求権侵害事件に対する国賠訴訟の訴状を紹介する。
訴 状
平成24年2月10日
東京地方裁判所民事部 御中
原告訴訟代理人弁護士 本 間 久 雄
原 告 堀 切 稔 仁
〒150-8010 東京都渋谷区宇田川町1番1号
被 告 渋谷区
上記代表者区長 桑 原 敏 武
損害賠償請求事件
訴訟物の価額 220万円
貼用印紙額 1万6000円
請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、金220万円及びこれに対する平成23年12月28日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は仮に執行することができる。
との判決を求める。
請求の原因
第1 当事者
1 原告は、渋谷区幡ヶ谷に住所を有する渋谷区民で、被告の違法不当な行政運営の監視是正を目的として設立された市民団体「渋谷オンブズマン」のメンバーである。原告は、渋谷オンブズマンのメンバーとして、被告の違法不当な行政運営に対し一切の妥協を許さない断固たる姿勢を貫き通し、被告を相手に多数の情報公開請求訴訟・環境行政訴訟・国家賠償請求訴訟・住民訴訟を提起してきた。
そして、原告は、平成23年4月より渋谷区議を務めている。
2 被告は、東京都特別区のうちの一つである。近年、被告は、違法不当な行政運営を問題視され、区民より多数の行政訴訟(住民訴訟・情報公開訴訟・環境行政訴訟・国家賠償請求訴訟等)を提起されている。被告の平成21年度の係争事件は、合計25件、平成22年度の係争事件は、合計21件であり、いずれも東京23区の中で最多の件数である。
3 渋谷区長桑原敏武は、渋谷区情報公開条例(甲1号証。以下、「本件条例」という。)に基づく情報公開事務の実施機関のうちの一つである。
第2 原告の本件提訴に至る経緯~情報公開抑圧事件~
1 平成23年7月29日、原告は、渋谷区長に対し、下記の2件の文書を情報公開請求した(甲2号証の1、甲2号証の2)。
記
「1 福祉部導入したNECのGPRIMEシステムの契約書。
2 1のシステムの使用書全て。」
「1 平成22年度の福祉部全職員(本庁在職の者のみ)の全勤務日報と全超 過勤務手当て(時間の分かる文書)
2 平成23年度の福祉部全職員(本庁在職の者のみ)の全勤務日報と全超 過勤務手当て(時間の分かる文書)4月分から6月分。
2 後述の本件条例第9条の2第1項が規定するように、原告は、情報公開請求した日(平成23年7月29日)から15日後の平成23年8月12日までに、渋谷区長から情報公開について可否決定を受けなければならないところ、渋谷区長は、原告の情報公開請求から約3ヶ月が経過した平成23年10月27日になっても原告に対し可否決定を行わなかった(なお、渋谷区長は、可否決定どころか期間延長の決定(本件条例第9条の2第2項)も行わなかった。)。
そのため、平成23年10月27日、原告は、被告の総務部総務部長柴田春喜に対し、どうして原告の情報公開請求について何らの応答も行わないのか尋ねたところ、柴田部長は、原告に対し、「堀切さんは議員だから議会の調査権を使って調査をして下さい。」、「議員が、情報公開請求を行うと、区長部局が混乱します。」、「堀切さんの情報公開請求について、開示の可否決定に向けた手続は何ら進められていません。」、「これからも議員である堀切さんの情報公開請求には応じません。」、「調査を進めるならば、議長を通して進めて下さい。」などと回答してきた。
柴田部長の回答に対して、原告は到底納得することができず、平成23年11月4日に再度説明を求めた(甲3号証)が、柴田部長は、10月27日と同様の回答をし、原告の情報公開請求に応じる気はないと述べた。
3 以上のような渋谷区長の対応は、区民であれば誰でも情報公開をなすことができるとする本件条例第5条の規定に明白に違反しており、渋谷区長が、原告の情報公開請求に応じないことは明らかに違法である。
このような渋谷区長の対応がまかり通るようなことになると、原告の「知る権利」が侵害され続けることになるばかりか、情報公開制度そのものの意義が根本から没却されることになるため、平成23年11月8日、原告は、御庁に不作為の違法確認の訴えを提起した(甲4号証)。
原告の情報公開請求に全く応じようとしない渋谷区長の異常な対応は、提訴前より新聞で報道され、世間の注目を集めていたところであるが(甲5号証)、原告の提訴は、各新聞が一斉に大々的に報道を行った(甲6号証の1ないし7)。
4 原告の提訴にも関わらず、平成23年12月19日、渋谷区長は、柴田総務部長をして「情報公開請求に対する取扱いについて」と題する文書を原告に交付させ、今後も原告に対して情報公開を行わない旨を表明した(甲7号証)。
そのため、平成23年12月22日に、原告代理人が、渋谷区長に対し、速やかに原告に対して情報公開を行わなければ職権濫用罪で告訴すると警告したところ(甲8号証)、渋谷区長は、平成23年12月28日、原告の情報公開請求に係る可否決定を行った(甲9号証の1、2)。そして、渋谷区長が、一転して原告に対し可否決定を行ったことは、新聞で報道された(甲10号証の1、2)。
渋谷区長が、原告に対して、可否決定を行ったため、原告が提訴した不作為の違法確認の訴えは、平成24年1月20日、訴えの利益がないとして却下された(甲11号証)。しかしながら、判決では、「本件各決定は、原告の本件各訴えの提起及び追行を契機としてされたものと推認される」(甲11号証3ページ)として、原告の請求を却下したものの、訴訟費用の負担を渋谷区に命じた。そして、上記却下判決は、実質的には原告の勝訴であるとして、新聞で報道された(甲12号証の1ないし4)。
5 以上のように、原告は、最終的には、情報公開請求にかかる文書を入手することができたものの、渋谷区長が、本件条例の趣旨を無視し、本件条例について独自の解釈・運用を行ったため、原告は、自らの権利の実現のために、訴訟を提起せざるを得なくなり、時間的経済的精神的負担を負った。また、被告の違法不当な行政運営の監視是正を自らのライフワークとしている原告にとって、民主主義の根幹を支える情報公開制度を根幹からないがしろにする渋谷区長の態度は絶対に看過することはできない。そのため、原告は、自らが被った精神的損害の賠償を求めて、本件訴訟を提起した。
第3 被告の違法性
1 本件条例の規定内容(甲1号証)
被告の違法性を論ずる前提として、本件条例の規定内容を述べていく。
(1)「第5条 次に掲げるものは、実施機関に公文書の公開を請求することができる。
一 区内に住所を有する者」
(2)「第6条 実施機関は、前条の規定による公開の請求(以下「公開請求」という。)があったときは、公開請求に係る公文書に次のいずれかに該当する情報(以下「非公開情報」という。)が記録されている場合を除き、公開請求者に対し、当該公文書を公開しなければならない。」
(3)「第9条の2 前条各項の決定(以下「公開決定等」という。)は、当該公開請求書を受理した日から起算して15日以内にしなければならない。ただし、第8条第2項の規定により補正を求めた場合にあっては、当該補正に要した日数は、当該期間に算入しない。
2 実施機関は、やむを得ない理由により、前項に規定する期間内に公開決定等をすることができないときは、当該公開請求書を受理した日から60日を限度として、その期間を延長することができる。この場合において、実施機関は、公開請求者に対し、速やかに延長後の期間及び延長の理由を書面により通知しなければならない。
3 公開請求に係る公文書が著しく大量であるため、当該公開請求書を受理した日から起算して60日以内にそのすべてについて公開決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には、前2項の規定にかかわらず、実施機関は、公開請求に係る公文書のうち相当の部分につき当該期間内に公開決定等をし、残りの公文書については相当の期間内に、公開請求者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一 本項を適用する旨及びその理由
二 残りの公文書について公開決定等をする期限」
(4)小括
以上のように、本件条例によれば、渋谷区民であれば誰でも情報公開請求が可能であり、実施機関は、情報公開請求について15日以内に応答しなければならず、仮に15日の期間内に公開決定をすることができないときは、書面にて延長後の期間及び延長の理由を情報公開請求者に示さなければならない。
2 前項で述べたように、渋谷区民であれば誰でも情報公開請求が可能であり、情報公開請求を受けた実施機関は、しかるべき期間内に必ず応答しなければならない。
ところが、渋谷区長は、原告が渋谷区議であり、議会の調査権限を用いるべきであり、情報公開制度を用いるべきではないなどとし(甲6号証の1ないし7)、原告の情報公開請求に応じなかった。
このような渋谷区長の態度は、渋谷区民であれば誰でも情報公開請求を行うことができるとする本件条例第5条1号の規定に反し、違法性を有することは明らかである。
3 したがって、原告の情報公開請求に応じなかった渋谷区長の行為は、明白に違法である。
第4 原告の受けた損害
1 原告は、行政法の大原則である法律による行政の原理を全く無視した渋谷区長の余りに恣意的な行為に驚き落胆するとともに、このような行為がまかり徹ようになると、情報公開請求によって被告から行政情報を得られなくなり、議会活動、ひいては原告のライフワークであるオンブズマン活動の継続が不可能となるのではないかとの恐れを抱くようになった。
さらに、原告は、渋谷区長の違法行為を是正するために、弁護士と訴訟提起のために打ち合わせをしたり、マスコミの取材に対応するなど、時間的経済的精神的負担を余儀なくされた。
2 原告は、情報公開請求に関して、以下のとおり、被告より再三に渡って違法な対応がなされてきた。
記
(1)原告が、渋谷区長に対し、公用車のガソリン代に係る明細書等の情報公開請求を行ったところ、明細書等が存在するにもかかわらず、渋谷区長が、明細書等が不存在であるとの処分を行った。そのため、原告が、かかる渋谷区長の対応について国家賠償請求訴訟を提起したところ、15万円の損害賠償が認められた(東京地裁平成22年10月22日判決(甲13号証))。
(2)原告が、渋谷区教育委員会に対し、笹塚中学校の職員の旅行命令簿等の情報公開請求を行ったところ、渋谷区教育委員会は、渋谷オンブズマンのブログに職員を誹謗中傷する記事が掲載されている(なお、そのような事実はない。)ことや一部メディアの記事によって正常な学校運営に支障を及ぼすことを理由に公文書非公開処分を行った。
渋谷区教育委員会の情報公開の理念ひいては、民主主義の理念を無視した余りに非常識な対応は、マスコミで報道され(甲14号証)、社会的に批判が集中したため、渋谷区教育委員会は、結局、原告に対し、旅行命令簿等について、公開決定処分を行った。
なお、この件に関して、原告は、取消訴訟を提起したものの、公開決定処分がなされたため、訴えは却下となった(甲15号証。なお、訴訟提起は、原告の権利の伸張に必要な行為と認められ、訴訟費用は、被告の負担とされた。)。
3 原告の情報公開請求権を全く認めない渋谷区長の行為は、憲法上の権利である「知る権利」を根本的に没却する由々しき行為であり、厳しく非難されるべきである。また、被告は、前述のように再三に渡って原告に対し、情報公開請求に関して違法行為を繰り返している。
このような事情に鑑みれば、慰謝料額は、過去の情報公開請求に関する国家賠償請求認容事例よりも高額な慰謝料額とすべきである(原告が知り得る限り、情報公開請求に関する国家賠償請求における認容額の過去最高額は、40万円である(甲16号証))。
したがって、本件に関する慰謝料額としては、金200万円、弁護士費用としてその1割にあたる金20万円が相当である。
第5 結語
以上の次第であるから、請求の趣旨記載のとおりの判決を速やかに求める。
第6 予想される争点
被告は、原告に対し、情報公開請求ではなく、議会の調査権を用いるよう行政指導を行っていたので、原告の情報公開請求に応じなかったことについて、違法性がないと主張するものと思われる。
しかしながら、原告は、被告からそのような行政指導を受けたことはないし、原告は、終始一貫して強く情報公開を求めていたことから、行政指導係属中の違法性阻却は認められないのは明白である(渋谷区行政手続条例第31条参照)。
以 上
訴 状
平成24年2月10日
東京地方裁判所民事部 御中
原告訴訟代理人弁護士 本 間 久 雄
原 告 堀 切 稔 仁
〒150-8010 東京都渋谷区宇田川町1番1号
被 告 渋谷区
上記代表者区長 桑 原 敏 武
損害賠償請求事件
訴訟物の価額 220万円
貼用印紙額 1万6000円
請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、金220万円及びこれに対する平成23年12月28日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は仮に執行することができる。
との判決を求める。
請求の原因
第1 当事者
1 原告は、渋谷区幡ヶ谷に住所を有する渋谷区民で、被告の違法不当な行政運営の監視是正を目的として設立された市民団体「渋谷オンブズマン」のメンバーである。原告は、渋谷オンブズマンのメンバーとして、被告の違法不当な行政運営に対し一切の妥協を許さない断固たる姿勢を貫き通し、被告を相手に多数の情報公開請求訴訟・環境行政訴訟・国家賠償請求訴訟・住民訴訟を提起してきた。
そして、原告は、平成23年4月より渋谷区議を務めている。
2 被告は、東京都特別区のうちの一つである。近年、被告は、違法不当な行政運営を問題視され、区民より多数の行政訴訟(住民訴訟・情報公開訴訟・環境行政訴訟・国家賠償請求訴訟等)を提起されている。被告の平成21年度の係争事件は、合計25件、平成22年度の係争事件は、合計21件であり、いずれも東京23区の中で最多の件数である。
3 渋谷区長桑原敏武は、渋谷区情報公開条例(甲1号証。以下、「本件条例」という。)に基づく情報公開事務の実施機関のうちの一つである。
第2 原告の本件提訴に至る経緯~情報公開抑圧事件~
1 平成23年7月29日、原告は、渋谷区長に対し、下記の2件の文書を情報公開請求した(甲2号証の1、甲2号証の2)。
記
「1 福祉部導入したNECのGPRIMEシステムの契約書。
2 1のシステムの使用書全て。」
「1 平成22年度の福祉部全職員(本庁在職の者のみ)の全勤務日報と全超 過勤務手当て(時間の分かる文書)
2 平成23年度の福祉部全職員(本庁在職の者のみ)の全勤務日報と全超 過勤務手当て(時間の分かる文書)4月分から6月分。
2 後述の本件条例第9条の2第1項が規定するように、原告は、情報公開請求した日(平成23年7月29日)から15日後の平成23年8月12日までに、渋谷区長から情報公開について可否決定を受けなければならないところ、渋谷区長は、原告の情報公開請求から約3ヶ月が経過した平成23年10月27日になっても原告に対し可否決定を行わなかった(なお、渋谷区長は、可否決定どころか期間延長の決定(本件条例第9条の2第2項)も行わなかった。)。
そのため、平成23年10月27日、原告は、被告の総務部総務部長柴田春喜に対し、どうして原告の情報公開請求について何らの応答も行わないのか尋ねたところ、柴田部長は、原告に対し、「堀切さんは議員だから議会の調査権を使って調査をして下さい。」、「議員が、情報公開請求を行うと、区長部局が混乱します。」、「堀切さんの情報公開請求について、開示の可否決定に向けた手続は何ら進められていません。」、「これからも議員である堀切さんの情報公開請求には応じません。」、「調査を進めるならば、議長を通して進めて下さい。」などと回答してきた。
柴田部長の回答に対して、原告は到底納得することができず、平成23年11月4日に再度説明を求めた(甲3号証)が、柴田部長は、10月27日と同様の回答をし、原告の情報公開請求に応じる気はないと述べた。
3 以上のような渋谷区長の対応は、区民であれば誰でも情報公開をなすことができるとする本件条例第5条の規定に明白に違反しており、渋谷区長が、原告の情報公開請求に応じないことは明らかに違法である。
このような渋谷区長の対応がまかり通るようなことになると、原告の「知る権利」が侵害され続けることになるばかりか、情報公開制度そのものの意義が根本から没却されることになるため、平成23年11月8日、原告は、御庁に不作為の違法確認の訴えを提起した(甲4号証)。
原告の情報公開請求に全く応じようとしない渋谷区長の異常な対応は、提訴前より新聞で報道され、世間の注目を集めていたところであるが(甲5号証)、原告の提訴は、各新聞が一斉に大々的に報道を行った(甲6号証の1ないし7)。
4 原告の提訴にも関わらず、平成23年12月19日、渋谷区長は、柴田総務部長をして「情報公開請求に対する取扱いについて」と題する文書を原告に交付させ、今後も原告に対して情報公開を行わない旨を表明した(甲7号証)。
そのため、平成23年12月22日に、原告代理人が、渋谷区長に対し、速やかに原告に対して情報公開を行わなければ職権濫用罪で告訴すると警告したところ(甲8号証)、渋谷区長は、平成23年12月28日、原告の情報公開請求に係る可否決定を行った(甲9号証の1、2)。そして、渋谷区長が、一転して原告に対し可否決定を行ったことは、新聞で報道された(甲10号証の1、2)。
渋谷区長が、原告に対して、可否決定を行ったため、原告が提訴した不作為の違法確認の訴えは、平成24年1月20日、訴えの利益がないとして却下された(甲11号証)。しかしながら、判決では、「本件各決定は、原告の本件各訴えの提起及び追行を契機としてされたものと推認される」(甲11号証3ページ)として、原告の請求を却下したものの、訴訟費用の負担を渋谷区に命じた。そして、上記却下判決は、実質的には原告の勝訴であるとして、新聞で報道された(甲12号証の1ないし4)。
5 以上のように、原告は、最終的には、情報公開請求にかかる文書を入手することができたものの、渋谷区長が、本件条例の趣旨を無視し、本件条例について独自の解釈・運用を行ったため、原告は、自らの権利の実現のために、訴訟を提起せざるを得なくなり、時間的経済的精神的負担を負った。また、被告の違法不当な行政運営の監視是正を自らのライフワークとしている原告にとって、民主主義の根幹を支える情報公開制度を根幹からないがしろにする渋谷区長の態度は絶対に看過することはできない。そのため、原告は、自らが被った精神的損害の賠償を求めて、本件訴訟を提起した。
第3 被告の違法性
1 本件条例の規定内容(甲1号証)
被告の違法性を論ずる前提として、本件条例の規定内容を述べていく。
(1)「第5条 次に掲げるものは、実施機関に公文書の公開を請求することができる。
一 区内に住所を有する者」
(2)「第6条 実施機関は、前条の規定による公開の請求(以下「公開請求」という。)があったときは、公開請求に係る公文書に次のいずれかに該当する情報(以下「非公開情報」という。)が記録されている場合を除き、公開請求者に対し、当該公文書を公開しなければならない。」
(3)「第9条の2 前条各項の決定(以下「公開決定等」という。)は、当該公開請求書を受理した日から起算して15日以内にしなければならない。ただし、第8条第2項の規定により補正を求めた場合にあっては、当該補正に要した日数は、当該期間に算入しない。
2 実施機関は、やむを得ない理由により、前項に規定する期間内に公開決定等をすることができないときは、当該公開請求書を受理した日から60日を限度として、その期間を延長することができる。この場合において、実施機関は、公開請求者に対し、速やかに延長後の期間及び延長の理由を書面により通知しなければならない。
3 公開請求に係る公文書が著しく大量であるため、当該公開請求書を受理した日から起算して60日以内にそのすべてについて公開決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には、前2項の規定にかかわらず、実施機関は、公開請求に係る公文書のうち相当の部分につき当該期間内に公開決定等をし、残りの公文書については相当の期間内に、公開請求者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一 本項を適用する旨及びその理由
二 残りの公文書について公開決定等をする期限」
(4)小括
以上のように、本件条例によれば、渋谷区民であれば誰でも情報公開請求が可能であり、実施機関は、情報公開請求について15日以内に応答しなければならず、仮に15日の期間内に公開決定をすることができないときは、書面にて延長後の期間及び延長の理由を情報公開請求者に示さなければならない。
2 前項で述べたように、渋谷区民であれば誰でも情報公開請求が可能であり、情報公開請求を受けた実施機関は、しかるべき期間内に必ず応答しなければならない。
ところが、渋谷区長は、原告が渋谷区議であり、議会の調査権限を用いるべきであり、情報公開制度を用いるべきではないなどとし(甲6号証の1ないし7)、原告の情報公開請求に応じなかった。
このような渋谷区長の態度は、渋谷区民であれば誰でも情報公開請求を行うことができるとする本件条例第5条1号の規定に反し、違法性を有することは明らかである。
3 したがって、原告の情報公開請求に応じなかった渋谷区長の行為は、明白に違法である。
第4 原告の受けた損害
1 原告は、行政法の大原則である法律による行政の原理を全く無視した渋谷区長の余りに恣意的な行為に驚き落胆するとともに、このような行為がまかり徹ようになると、情報公開請求によって被告から行政情報を得られなくなり、議会活動、ひいては原告のライフワークであるオンブズマン活動の継続が不可能となるのではないかとの恐れを抱くようになった。
さらに、原告は、渋谷区長の違法行為を是正するために、弁護士と訴訟提起のために打ち合わせをしたり、マスコミの取材に対応するなど、時間的経済的精神的負担を余儀なくされた。
2 原告は、情報公開請求に関して、以下のとおり、被告より再三に渡って違法な対応がなされてきた。
記
(1)原告が、渋谷区長に対し、公用車のガソリン代に係る明細書等の情報公開請求を行ったところ、明細書等が存在するにもかかわらず、渋谷区長が、明細書等が不存在であるとの処分を行った。そのため、原告が、かかる渋谷区長の対応について国家賠償請求訴訟を提起したところ、15万円の損害賠償が認められた(東京地裁平成22年10月22日判決(甲13号証))。
(2)原告が、渋谷区教育委員会に対し、笹塚中学校の職員の旅行命令簿等の情報公開請求を行ったところ、渋谷区教育委員会は、渋谷オンブズマンのブログに職員を誹謗中傷する記事が掲載されている(なお、そのような事実はない。)ことや一部メディアの記事によって正常な学校運営に支障を及ぼすことを理由に公文書非公開処分を行った。
渋谷区教育委員会の情報公開の理念ひいては、民主主義の理念を無視した余りに非常識な対応は、マスコミで報道され(甲14号証)、社会的に批判が集中したため、渋谷区教育委員会は、結局、原告に対し、旅行命令簿等について、公開決定処分を行った。
なお、この件に関して、原告は、取消訴訟を提起したものの、公開決定処分がなされたため、訴えは却下となった(甲15号証。なお、訴訟提起は、原告の権利の伸張に必要な行為と認められ、訴訟費用は、被告の負担とされた。)。
3 原告の情報公開請求権を全く認めない渋谷区長の行為は、憲法上の権利である「知る権利」を根本的に没却する由々しき行為であり、厳しく非難されるべきである。また、被告は、前述のように再三に渡って原告に対し、情報公開請求に関して違法行為を繰り返している。
このような事情に鑑みれば、慰謝料額は、過去の情報公開請求に関する国家賠償請求認容事例よりも高額な慰謝料額とすべきである(原告が知り得る限り、情報公開請求に関する国家賠償請求における認容額の過去最高額は、40万円である(甲16号証))。
したがって、本件に関する慰謝料額としては、金200万円、弁護士費用としてその1割にあたる金20万円が相当である。
第5 結語
以上の次第であるから、請求の趣旨記載のとおりの判決を速やかに求める。
第6 予想される争点
被告は、原告に対し、情報公開請求ではなく、議会の調査権を用いるよう行政指導を行っていたので、原告の情報公開請求に応じなかったことについて、違法性がないと主張するものと思われる。
しかしながら、原告は、被告からそのような行政指導を受けたことはないし、原告は、終始一貫して強く情報公開を求めていたことから、行政指導係属中の違法性阻却は認められないのは明白である(渋谷区行政手続条例第31条参照)。
以 上
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