
渋谷オンブズマンは桑原敏武渋谷区長が使用した区長公用車の使用方法に違法があるとして、大澤一雅前総務課長と桑原区長に7万2790円の返還を求める住民訴訟を東京地裁に17日までにを起こした。訴訟は14日付け。また、区長公用車を不要にもかかわらず購入したのは不当だとして住民監査請求を16日付けで提起した。
訴訟の背景には運転日報、区長公務日誌などを開示しない渋谷区の姿勢を正すという目的がある。訴訟では、少額でも渋谷区は証拠を出さざるを得ないことになることが予想される。
住民監査請求については、産経新聞がインターネットで報じている。下記をクリックすると、産経新聞の記事を閲覧することができる。
産経新聞 以下、訴状。
請 求 の 趣 旨
1.被告は、前総務課長大澤一雅に対して、地方自治法242条の2第1項4号ただし書に基づき、下記金額の合計額、金72,790円の賠償の命令をせよ。
記
(ア)平成20年8月19日、渋谷区長桑原敏武は個人的旅行で成田空港を利用するに際して、渋谷区役所から成田空港まで公用車を使用した。
本件の為に使用されたガソリン代(往復分)2,224円と高速代(往復分)4,500円及び運転手の職員給与相当分3,584円、超過勤務手当15,124円の合計25,432円。
(イ)平成20年8月26日、渋谷区長桑原敏武は個人的旅行で成田空港に帰着した際、成田空港から東京まで公用車を使用した。
本件の為に使用されたガソリン代2,224円と高速代4,500円及び運転手の職員給与相当分12,995円の合計19,719円。
(ウ)平成20年9月10日、渋谷区長桑原敏武はトルコ共和国・フィンランド共和国との海外都市、文化交流訪問の帰国の際に各都市より贈られた海外交流記念品を運搬するために区長公用車を運行させた。荷物運送のためなら軽自動車を運行させるべきである。
本件の為に使用された高速代の差額600円とガソリン代(往復分)の半額2,424円の合計3,024円。
(エ)平成20年11月9日(日)の早朝、渋谷区議会議員・下嶋倫朗の後援会「みちお旅行会」の旅行の出発に際して、渋谷区長桑原敏武は同旅行の参加者に対して挨拶をする目的で、公用車を使用して同所へ赴いた。
本件の為に使用されたガソリン代363円と運転手(佐藤長伸)の超過勤務手当5,041円の合計5,404円。
(オ)平成20年11月16日(日)の早朝、渋谷区議会議員・丸山高司の後援会旅行の出発に際して、渋谷区長桑原敏武は同旅行の参加者に対して挨拶をする目的で、公用車を使用して、同所へ赴いた。
本件の為に使用されたガソリン代363円と運転手(柳沢節夫)の超過勤務手当6,722円の合計7,085円。
(カ)平成21年1月25日(日)の夕刻、渋谷区長桑原敏武は渋谷区議会議員・下嶋倫朗の後援会の新年会に参加する目的で、公用車を使用して、同所へ赴いた。
本件の為に使用されたガソリン代363円と運転手の超過勤務手当11,763円の合計12,126円。
2.被告は、渋谷区長桑原敏武に対して、上記金72,790円の賠償について、地方自治法242条の2第1項4号本文の「損害賠償の請求」に基づき、個人の資格において連帯して支払うように請求せよ。
3.訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
請 求 の 原 因
1.当事者
(1)原告は、東京都渋谷区内に居住する住民であり、渋谷オンブズマンのメンバーである。
(2)桑原敏武は渋谷区長である。
(3)大澤一雅は、平成19年4月1日から平成21年3月31日まで総務課長であり、渋谷区自動車の管理に関する規則第三条によれば、総務課長は乗用車の管理に関する事務を掌理している。(甲1号証)
2.公用車運行の法令上の根拠と本件違法運行の責任者
渋谷区自動車の管理に関する規則第三条には、「乗用車の管理に関する事務は、総務部総務課長が掌理するものとする。」と明記されている。(甲1号証)
以上より、本件違法運行の直接の責任者は前総務課長の大澤一雅であり、地方自治法243条の2の「占有動産を保管している職員又は物品を使用している職員」に該当する。
区長公用車は渋谷区長桑原敏武の意向によって運行されると推認されるので、大澤一雅と桑原敏武の両名を返還請求の対象とした。
3.監査請求前置
原告は、平成21年6月18日に渋谷区監査委員に対して渋谷区職員措置請求(住民監査請求)を行い、平成21年8月17日付で渋谷区監査委員は「渋谷区職員措置監査請求について」を郵送してきた。(甲2号証)
4.本件公用車運行の法令上の根拠
渋谷区自動車の管理に関する規則第五条の一~四によれば、乗用車の使用範囲は「公務で使用する場合」と明記されている。同規則第五条の五には「総務部総務課長が必要と認めた場合」とあるが、これも無制限に認められるわけではなく、「公務で使用する場合」が原則であることは言うまでもない。
また、地方自治法第2条16項には、「地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。なお、市町村及び特別区は、当該都道府県の条例に違反してその事務を処理してはならない。」とある。
5.損害賠償額の算定根拠
(1)ガソリン代
走行距離÷区長公用車の燃費(ガソリン1㍑あたりの走行距離)
=使用したガソリンの量
使用したガソリンの量×当時のガソリン1㍑あたりの値段
=ガソリン代の損害賠償額
・ガソリン1㍑あたりの値段は、平成20年8月31日までは166.6円(甲3-1号証)。平成20年9月1日以降は181.6円(甲3-2号証)。
・走行距離は概算方法については、ホームページ及び甲2号証の6頁~7頁を参照。
・区長公用車の燃費は、ガソリン1㍑あたり11.8km走る。(甲4号証)
(2)自動車運転手の給与並びに超過勤務手当の時給
運転手が特定できないので、渋谷区の技能労務職のうち自動車運転手の平均給与から起算した。(甲5号証)
平均給与は月額430,251円である。
日給は430,251円÷20日(1ケ月の平均勤務日数)=21,512円
時給は21,512円÷8時間(1日の勤務時間)=2,689円
超過勤務手当の時給は2,689円×1.25=3,361円
(3)自動車運転手が本件違法運行に従事した時間の算定
区長公用車運行日誌(甲6号証)と超過勤務等命令簿(甲7-1号証~甲7-3号証)による。
6.本件損害賠償額の算定
本件公用車の違法運行による損害賠償額を、請求の趣旨記載の(ア)~(カ)について、順次説明する。
(ア)渋谷区役所~天現寺~成田空港は往復157.6kmである(甲2号証7頁)。
当時のガソリンの値段は1㍑166.6円である(甲3-1号証)。監査請求では1㍑181.6円としていたが、本訴訟では1㍑166.6円に訂正する。
区長公用車の燃費は、ガソリン1㍑あたり11.8kmである。(甲4号証)
従って使用したガソリンは、157.6km÷11.8km=13.35㍑である。
ガソリン代の返還請求額は、166.6円×13.35㍑=2,224円である。
高速料金の返還請求額は天現寺~成田(往復)の4,500円である(インターネットで調べた結果である)。
運転手が本件に従事した時間は、15:55~21:30であるから(甲6号証)、15:55から17:15までの1時間20分が通常勤務時間、17:15から21:30までの4時間15分が超過勤務時間である。
超過勤務手当は、30分単位で加算されるので、それに倣う。
運転手の職員給与相当分は、2,689円×1.333=3,584円である。
運転手の超過勤務手当は、3,361円×4.5=15,124円である。
(イ)ガソリン代と高速料金の返還請求額は(ア)と同じである。
運転手が本件に従事した時間は、12:05から16:55までの4時間50分である(甲6号証)。
運転手の職員給与相当分は、2,689円×4.833=12,995円
(ウ)当時のガソリンの値段は1㍑181.6円である(甲3-2号証)。
ガソリン代の返還請求額は、181.6円×13.35㍑=2,424円である。
軽自動車の燃費は、クラウンの2倍程度と推量する。
高速料金の返還請求額は、天現寺~成田(往復)の差額600円である(インターネットで調べた結果である)。
(エ)ガソリン代の返還請求額363円は、甲2号証6頁にある通り算出した。
運転手(佐藤長伸)の超過勤務時間は1時間30分である(甲7-1号証)。従って、超過勤務手当額は3,361円×1.5=5,041円である。
(オ)ガソリン代の返還請求額363円は、甲2号証6頁にある通り算出した。
運転手(柳沢節夫)の超過勤務時間は2時間である(甲7-2号証)。従って、超過勤務手当額は3,361円×2=6,722円である。
(カ)ガソリン代の返還請求額363円は、甲2号証6頁にある通り算出した。
運転手の超過勤務時間は3時間30分である(甲7-3号証)。従って、超過勤務手当額は3,361円×3.5=11,763円である。う
7.本件公用車運行の違法性
本件公用車運行の違法性を、請求の趣旨記載の(ア)~(カ)について、順次主張する。
(ア)平成20年8月19日、渋谷区長桑原敏武は個人的旅行で成田空港を利用するに際して、渋谷区役所から成田空港まで区長公用車を使用した。
ところが、渋谷区監査委員は、「車内で渋谷区ニュースの執筆や職員等の電話連絡等の公務を行う必要があったため区長公用車を使用したのであるから、不正な使用ではない」とする。
しかし、私的旅行で成田から飛行機を利用するに際して、東京から成田まで区長公用車を運行させ、車中で上記のような公務を行ったとしても、本件は区長公用車運行の拡大解釈であり、到底容認できるものではない。このような理屈がまかり通るなら、私的な目的で区長公用車を運行させても全てが認容されてしまう。よって、本件は渋谷区自動車の管理に関する規則第五条に違反する違法運行である。
以上のような血税に対する感覚の麻痺は、桑原敏武、大澤一雅もさることながら、渋谷区監査委員の倉林倭男と小林春雄も救いがたい状況にあると言わざるをえない。渋谷区監査委員は職責を果たしておらず、渋谷区民、納税者としては、愕然とする思いである。
(イ)平成20年8月26日、渋谷区長桑原敏武は個人的旅行で成田空港に帰着した際、成田空港から東京まで区長公用車を使用した。
ところが、渋谷区監査委員は、「車内において、区長の不在中における重要事項の詳細を区長に直接報告するため区長公用車を使用したのであるから、不正な使用ではない」とする。
本件も区長公用車運行の拡大解釈であり、到底容認できるものではなく、渋谷区自動車の管理に関する規則第五条に違反する違法運行である。
このような子供騙しの理屈がまかり通り、渋谷区監査委員が監査結果書の中に堂々書いていることに驚きを禁じ得ない。
(ウ)平成20年9月10日、渋谷区長桑原敏武はトルコ共和国・フィンランド共和国との海外都市、文化交流訪問の帰国の際、各都市より贈られた海外交流記念品
を運搬するために、わざわざ区長公用車を運行させた。荷物を運搬することが目的であれば、渋谷区が所有している軽自動車のバンで十分である。軽自動車であれば、高速代は600円安くなり、燃料費は半額ですむ。
本件の為に使用された高速代の差額600円とガソリン代(往復分)の差額2,424円の合計3,024円が違法支出となる。
(エ)平成20年11月9日(日)の早朝、渋谷区議会議員・下嶋倫朗の後援会「みちお旅行会」の旅行の出発に際して、渋谷区長桑原敏武は同旅行の参加者に対して挨拶をする目的で、公用車を使用して、同所へ赴いた。
ところが、渋谷区監査委員は、「区長は、公選区長として政治公約を掲げて立候補をし、区民の信任を得て当選しており、その公約に掲げた政策実現のため、また、区政の円滑な運営を図るため、区民団体、事業者、議員後援会をはじめ政治団体の会合等に参加し、区政への理解協力を求める事も、区長の重要な公務であることは否定できないところである。とりわけ予算や条例制定等の議事機関である議会、その構成員である議員との関係は、区長にとって極めて重要であると思料するものである。」としている。
しかしながら議員の後援会の目的は、議員の政治活動・選挙活動を後援することであり、最大の目的は議員を選挙で当選させることである。バス旅行の目的は、日頃から会員相互の懇親を図り、いざ選挙の時は選挙運動の協力を得て当選を果たすためである。仮に、議員後援会をはじめ政治団体の会合等に参加し、区政への理解協力を求める事も、区長の重要な公務であるとしても、日曜日の早朝、議員の後援会バス旅行の出発に際して一言挨拶するだけの目的で公用車を運行させることが妥当であるとは言えない。区長の公務が如何に多方面にわたるとしても、本件を認容してしまえば、公用車運行に公私の区別は無くなってしまう。
よって、本件は、渋谷区自動車の管理に関する規則第五条に違反する違法運行である。
(オ)平成20年11月16日(日)の早朝、渋谷区議会議員・丸山高司の後援会旅行の出発に際して、渋谷区長桑原敏武は同旅行の参加者に対して挨拶をする目的で、公用車を使用して、同所へ赴いた。
本件も、上記(3)と同じ理由で、渋谷区自動車の管理に関する規則第五条に違反する違法運行である。
(カ)平成21年1月25日(日)の夕刻、渋谷区長桑原敏武は渋谷区議会議員・下嶋倫朗の後援会の新年会に参加する目的で、公用車を使用して、同所へ赴いた。 ところが、渋谷区監査委員は、「区長は、公選区長として政治公約を掲げて立候補をし、区民の信任を得て当選しており、その公約に掲げた政策実現のため、また、区政の円滑な運営を図るため、区民団体、事業者、議員後援会をはじめ政治団体の会合等に参加し、区政への理解協力を求める事も、区長の重要な公務であることは否定できないところである。とりわけ予算や条例制定等の議事機関である議会、その構成員である議員との関係は、区長にとって極めて重要であると思料するものである。」としている。
議員の後援会については、上記(3)の通りであるが、本件は1月下旬の日曜日の夕方という新年会のピーク時期であり、もし、他の区民団体、事業者団体等の新年会を回る一環として、本件新年会に出席したのであれば、理解できる部分もある。
しかし、渋谷区においては、区長公用車の運行日誌は出庫時間と入庫時間しか記載されていない(甲8号証)。区長公務日誌については情報公開請求をしたものの不存在を理由に非公開ということなので(甲9号証)、渋谷オンブズマンは非公開決定処分取消訴訟を提訴し、現在、東京地裁民事2部に係属されている。すなわち渋谷区においては、桑原区長主導の下、公然と情報隠しが行われているのである。 平成21年1月25日(日)の区長公用車の運行状況を具体的に立証できないのであれば、すなわち渋谷区議会議員・下嶋倫朗の後援会の新年会に参加する目的のみで、公用車を使用したのであれば、本件は違法運行と言わざるを得ない。
結 語
以上の次第であり、原告は、地方自治法、渋谷区自動車の管理に関する規則に基づき、請求の趣旨記載の通りの請求する。
附 属 書 類
1.証拠説明書2通
2.甲号証の写し各2通
theme : 政治・地方自治・選挙
genre : 政治・経済