【羽澤ガーデン】仮の差し止め申し立てを提起

羽澤ガーデン行政訴訟の「仮の差し止め」の申立書を入手したので紹介する。
今後の展開が注目される。


申立の趣旨

1(1)処分行政庁東京都教育委員会は、別紙物件目録記載の建物およびこれと一体をなす庭園を文化財保護法第110条による史跡名勝として仮指定を行うべく、仮に義務付ける。
(2)同処分行政庁は、上記処分と併行して、上記建物を所有する件外株式会社日山(東京都中央区日本橋人形町2丁目5番1号所在 以下「日山」という)、マンション開発事業者件外三菱地所レジデンス株式会社(東京都千代田区大手町1丁目5番1号所在 以下「三菱地所」という)、および工事事業者件外大成建設株式会社(東京都新宿区西新宿1丁目25番1号新宿センタービル所在 以下「大成建設」という)らに対し、
① 上記建物を解体し、庭園を取り崩し、樹木の伐採等してその現状の変更に着手してはならない
② 変更に着手した場合は直ちに原状回復をしなければならない
との命令を発するべく、仮に義務付ける。
2(1)処分行政庁東京都知事は、日山に対し、別紙物件目録の建物及びこれと一体をなす土地、樹木、植生を景観法第19条が定める景観建造物として指定するべく、仮に義務付ける。
(2)同処分行政庁は、日山、三菱地所および大成建設に対し、別紙目録記載の建物及び土地について、景観法22条1項、23条1項に基づき除却その他の現状変更を禁止する命令を発するべく、仮に義務付ける。
3 処分行政庁東京都知事は、東京都の自然保護条例第54条1項に基づき、日山、三菱地所および大成建設に対し、別紙物件目録記載の建物の解体及び同目録記載の土地における樹木の伐採等土地の形質の変更一切を禁止する命令を発するべく、仮に義務付ける。
4(1)処分行政庁渋谷区長の、同処分庁による日山、三菱地所および大成建設に対する別紙物件目録記載の土地に係る都市計画法第29条の開発許可処分を仮に差止める。
(2)同処分庁は、日山、三菱地所および大成建設に対し、別紙物件目録記載の建物の解体および同目録記載の土地上における樹木の伐採等土地の形質の一切の変更を禁止する命令を発するべく、仮に義務付ける。
5 処分行政庁渋谷区建築主事の、同処分庁による日山、三菱地所及び大成建設に対する別紙記載の土地における建築確認を仮に差止める。
6 申立費用は相手方らの負担とする。
との裁判を求める。

申立の原因

はじめに
 申立の趣旨記載の請求は、いずれも本日までに本案が提起されている。
1.趣旨1及び同2(2)、同4(2)
平成23年(行ウ)第540号(以下「第4訴訟」という)
2.趣旨2(1)
平成20年(行ウ)第505号、同587号(以下「第3訴訟」という)
3.趣旨3
平成20年(行ウ)第105号、同118号(以下「第2訴訟」という)
4.趣旨4(1)及び同5
  平成19年(行ウ)第648号(以下「第1訴訟」という)
 従って、行政事件訴訟法(以下「行訴法」という)第35条1項、同2項の「訴えの提起があった場合」という要件を充たしている。以上を前提に論ずる。

第1 償うことのできない損害の存在と緊急性
1.行訴法第37条の5のいう「償うことのできない損害」とは、同法37条の2乃至同条の4がいうところの重大な損害のうち、代償できないものをいうのである。重大な損害については、本案で既に述べているので、義務付け(差止め)の訴えにかかる処分がなされないことにより生ずる「償うことのできない損害」について述べることとする。
2.財産上の損害は、いうまでもなく代償できるものの典型である。これに対して、健康と文化に関わる損害は、人間の尊厳に直結し、原則として代償できない、かけがえのないものであることも議論の余地はあるまい。
申立の趣旨で求められている義務付けや差止めの処分に関わる損害は、いずれも財産上のものではなく、なによりも文化財保護法の重要文化財、史跡名勝、景観法のいう景観建造物、東京都自然保護条例第47条のいうみどりの「自然地」の景観というかけがえのないものが破壊され喪失するという、そのことにある。
羽澤ガーデンのかけがえのない文化的価値とみどりの景観は「国民的財産」である。裁判所による検証、専門家の鑑定等により、すでに充分証明されている。これが喪われること自体が、まさに償うことのできない損害なのである。さらにこのようなかけがえのないものを生活の内実として暮らしてきた申立人(原告)らのみならず、ここを通り、あるいは訪れて、羽澤ガーデンから薫り立つみどりと文化で心を洗っていた多くの人々の五感や心もまた償うことのできない損害を蒙ることになるのである。
文化財はもとより財産権ではない。人間国宝のように、文化の社会的価値を表象しているにすぎない。羽澤ガーデンは、有形文化財(景観建造物等)としてのひとつの物的存在であるから、これの回復不能な喪失そのものが客観的な償えない損害であり、この客観的損害は直ちに周辺住民と羽澤ガーデンを知る人々、いや、これから知ろうとする文化や環境の心ある国民の全ての心に償えない損害が生じることになるのである。
長年、日々の自分たちの生活と存在の内実、心の拠り所としてきた申立人ら近隣住民の損害は重く、到底償うことはできない。
2.日山、三菱地所、大成建設らは、10月3日からの解体工事は本件マンション開発の出発点であると公言している(甲1、説明会資料)。
大正4年に中村是公が建築した本宅約300坪他すべての建物を解体するとともに、敷地の北部、東部、南部等過半を占め、武蔵野を思わせる樹木を伐採し、庭をすべて取り潰すべく、事業者らは急いでいる。羽澤ガーデンが喪われ、代償不能な損害がまさに生じようとしているのである。

第2 本案について理由のあること
1.本件のマンション開発は、平成19年に公表された計画以来、本案訴訟の内外における原告(申立人)ら住民と有識者らの全国的な活動により凍結され、また自民党から民主党への政権交代以来、文部科学大臣川端達夫氏らの好意的な対応がなされる等して、本案はわが国の環境文化行政訴訟の都市部を代表するところまで進んだ。
しかし日山、三菱地所らの計画は、開発事業地を若干(正門前の旧駐車場約130坪)減少させただけで、中村是公が大正4年に建築した建物群を取り壊し、これだけでも文化財だといわれているところはおろか、樹林と庭の大半を取り潰し、切土、盛土、舗装による表土の甚だしい喪失、擁壁の建造等、土地の形質を一変させる、まさに羽澤ガーデンの根元的破壊である点については今に至るもいささかも変わっていない。
本案における原告らの義務付け(差止め)の請求は、いずれも理由があることは4年余りにわたる弁論の記録、とりわけ先述した検証記録とこれに基づく専門家の鑑定書、羽澤ガーデンの現状とみどりの景観を示す写真(甲2)等々、弁論の全趣旨から明確であるというべきである。
2.そこで、この機会に本案における行訴法の義務付け(第37条の2)、差止め(第37条の4)の要件との関係を整理しておく。
(1)まず、義務づけの要件の要点を指摘する。
「第37条の2
第1項 ・・・義務付けの訴えは、一定の処分がなされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。
第2項 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度・・・をも勘案するものとする。」
第4訴訟訴状の請求の趣旨1(文化財の仮指定請求等)について例示して指摘しよう。この訴状の請求原因1で記したとおり、羽澤ガーデンが重要文化財に相当すること、川端大臣も文化的価値を認めているけれども文化審議会の諮問手続が終了していないため文部科学大臣の指定(文化財保護法第27条)には相当の時間がかかるところ、先述したとおり日山、三菱地所らによる羽澤ガーデンの破壊が差し迫っているのであるから、緊急の場合の保全処分である仮指定の処分権限を有する東京都教育委員会にその義務づけを求める以外「損害を避けるため他に適当な方法がない」ことは極めて明白であろう。損害は重大かつ回復不能であり、原告のみならずわが国の国民はかけがえのない文化財を喪うことになるのであるから、行訴法の要件をすべて充たしているのである。
(2)その余の義務付けの請求、および差止めの請求について要件は同一であるが、この点に関する差止請求もまた要件を充たしている。
(3)所有権の名における文化財破壊の違法性
上記(1)(2)の部分について、以下若干の補充をし、確たる理解を得たい。
① すでに述べたところにより、羽澤ガーデンが、文化財保護法2条1項1号に規定する有形文化財であるのみならず、同法27条1項に規定する有形文化財のうち重要なもの、すなわち、重要文化財に相当するものであることが明らかである。
申立人は、羽澤ガーデンが重要文化財に相当するものであることを理由の一つとして、本申立てに及んでいるものであるが、これについては、たとえ羽澤ガーデンが重要文化財に相当するとしても、所有者たる株式会社日山が羽澤ガーデンを解体することは所有権の権能の範囲内であるとの反論もあり得る。
しかし、かかる見解は、憲法前文、憲法11条、12条、25条、29条2項に基づき、重要文化財に相当するものの所有者に課せられた重大な制約が存することを看過した議論であって、憲法のもとに存在する実定法秩序に著しく反するものである。
② 憲法29条は、1項において、「財産権は、これを侵してはならない。」と規定するものの、2項において、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と規定しているので、財産権は不可侵とか所有権は絶対と位置づけられるのではなく、あくまでも公共の福祉に従うことと立法府の法律で定めた内容に限定されることになった。
このことは極めて重要である。なぜならば、憲法11条は国民の基本的人権を「侵すことのできない永久の権利として現在及び将来の国民に保障される」としているのに対し、基本的人権とはいえない国民の権利・自由については、第12条において「国民はこれを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」として、基本的人権との位置づけの違いを明確にしている。これはアメリカのニューディールにおいて採用されたダブルスタンダードの原則の反映でもあるが、ワイマール憲法以来の社会的原則であり、昭和41年10月の全逓東京中郵大法廷判決で確立された判例でもある。
そして「文化的生活」を営む権利、すなわち文化を享受することが基本的人権であることは憲法25条の明記するところであり、憲法前文、その他の関連規定もこれを充分裏付けている。
文化財は、文化の結晶ともいうべきものであることはいうまでもなく、文化財の有する文化を享受することは、文化における基本的人権の代表的存在である。文化財を破壊することは、所有権の名において文化及び文化財を享受するという基本的人権を踏みにじるものであり、到底許されるものではない。ダブルスタンダードという我が国の憲法の大原則からする限り、かかる行為をすることは何人も是認されない。そうであるから文化財は国民的財産であり、単なる個人的所有の対象ではないことを文化財保護法第4条も明記しているのである。
③ ところで、我が国憲法の理念は社会福祉国家の実現にあり、社会福祉国家とは、精神活動や経済活動の自由のみならず、人が人らしく社会に生きるうえで健康と並んで文化が必須の条件であるとする国家観である。
そして、社会福祉国家を実現するため、法律をもって財産権には様々な制約が加えられてきたところであり、昭和25年5月30日に議員立法により「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的」として制定された文化財保護法も、かような法律の一つなのである。
④ すなわち、文化財保護法は、重要文化財の制度を設け、重要文化財については、その所有者であっても、現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならないとし、所有者が損壊等の行為をしたときは、2年以下の懲役若しくは禁錮又は20万円以下の罰金若しくは科料に処すると規定しているのである(43条1項、195条2項)。
このように、文化財保護法は、重要文化財については、たとえ所有者であっても、勝手に取り壊すことを罰則付きで禁止しており、明確に所有権に制約を課しているのである。
⑤ もっとも、文化財保護法は、重要文化財の制度の中で、「文部科学大臣は、有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定することができる。」と定めているので(27条1項)、同法43条1項が規定する所有権の制約は、文部科学大臣が指定した重要文化財のみに課せられるのか、文部科学大臣の指定がなくても重要文化財に相当するものについても及ぶのかが問題となる。
これについては、同法3条が、「文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものである」と規定しており、文化財が歴史、文化等の理解や将来の文化の向上発展に不可欠という点で高度の公共性を有する公共的財産とされている以上、客観的には重要文化財に相当するのに、文部科学大臣がたまたま重要文化財として指定したかどうかにより、所有者に対して制約が課されるかどうかが異なるのは合理的な理由がないといわざるを得ない。
したがって、同法43条1項は、文部科学大臣の指定があった重要文化財にのみ適用される創設規定ではなく、文部科学大臣の指定がなくても重要文化財に相当する文化財について適用される規定で、文部科学大臣の指定があった重要文化財につき敢えて注意的に定めたと解すべきことになる。
このことは、我が国文化法学界の第一人者である椎名慎太郎教授を含む我が国公法学会を代表する学者の論述から充分理解することができる。
⑥ よって、憲法29条2項による法律に基づく財産権の内容として、文化財保護法43条が、重要文化財に相当するものであれば、たとえ所有物であっても、勝手に取り壊すことができないと定めていると解されるところ、本件では、三菱地所レジデンス株式会社および株式会社日山は文化庁長官の許可を受けなければ羽澤ガーデンの解体等原状変更をすることができないのに、その許可を受けずに羽澤ガーデンを解体しようとするものであるので、両者の解体行為の重大な違法性は明らかであり、本申立に及んだ。
なお、羽澤ガーデンが文化財であることは何人も否定できないことは、本案の弁論において十二分に証明されている。重要文化財であると否とにかかわらず、以上の理が成り立つことはいうまでもないところである。
(3)なお、本案前の重要な問題点について一点だけ述べておく。
   本件において相手方(本案被告)らは、申立人(原告)らのほとんどの請求について原告適格を否定しているものの、裁判所の訴訟指揮はそうではなく、実体審理を行い、検証までに至っている。
このことは、原告適格について充分クリアしており、景観を含む文化的価値、みどり(東京都自然保護条例等)に関する違法等の存否について実体審理を行ってきたということであり、これは極めて大切なことである。
これがまぎれもない真実であることは、差止めの請求につき行訴法10条1項の準用がないことについて、杉原裁判長が各当事者に対して書面による釈明を求めていることからして疑う余地のないものとなっている。このことを充分ふまえて裁判所は事にあたられたい。

第3 追記――直近に判明した事実、羽澤ガーデン破壊の実相
  去る9月16日(金)午後7時より、國學院大學院友会館で三菱地所、大成建設等が主催して開かれた羽澤ガーデンの「解体説明会」において、三菱地所の担当者である大川隆久パートナー事業部開発第1グループシニアリーダー(一般的に言えば係長級)は、その説明の際、羽澤ガーデンの中村是公が建築した建物の本体等、今回の解体の対象となる建物は、三菱地所が日山から買い受けたもので、所有者は三菱地所であるかのごとき説明を行ったばかりでなく、本来の所有者であるはずの日山の村上紀通社長等、羽澤ガーデンをよく知る肝心の日山関係者の姿がなかった。そこで不審に思い、参加者が質したが、回答が要領を得なかった。羽澤ガーデンの主要な建物を開発と解体のために三菱地所が買い受け、直ちに解体に着手するとすれば、それ自体、仮にも「文化企業」を標榜する三菱地所の世間を甚だしく欺く悪行として大問題となる。
そこで真偽を確認するため、三連休明け、直ちに調査したところ、以下の事実が判明した。

 1.羽澤ガーデンの本宅(家屋番号325番)と土蔵(325番2)
(1) 本年7月7日付で2棟の建物が合体登記され(新家屋番号77番1の6)、建物の種類が「倉庫」とされた。
(2) 同月26日付で同建物が売買され、所有権が日山から三菱地所レジデンスに移転した。
 2.羽澤ガーデンの茶室「古梅庵」(家屋番号77番1の3)と南東側の広間「明徳庵」(77番1の4)
(1) 本年7月7日付で2棟の建物が合体登記され(新家屋番号77番1の7)、建物の種類が同じく「倉庫」とされた。
(2) 上記と全く同じく、同月26日付で同建物が売買され、所有権が日山から三菱地所レジデンスに移転した。
 
この7月26日の建物の売買は本物かどうかはわからない。昨年の検証(11月22日)は勿論日山の所有であったし、その後も8月9日付の被告渋谷区の上申書にも三菱地所への所有権移転の事実は記されていない。
単なる登記上の操作であるかもしれないが、三菱地所は、まさに解体、破壊のために中村是公の築いた建物、かけがえのない文化財としての屋敷を、これとは無縁の「倉庫」と虚偽の登記をしたうえで解体、開発するために買い取った表装をとり、羽澤ガーデンの解体、破壊に対する日山の責任を隠蔽するために、自ら泥を被ろうとしているとしか考えられない。
しかし、所有者を日山から三菱地所へ移すことによって、羽澤ガーデンの破壊を免責しようと考えているのであれば日本を「代表」する企業の驕りそのものであり、浅慮というほかはない。いかなる者が行おうと、解体、破壊が歴史と文化に対する犯罪であることに何の変わりもないからである。
以 上



疎明資料
甲1 解体説明会のお知らせ及び配布資料
甲2 羽澤ガーデンの現在の写真
甲3 元文部科学大臣(現総務大臣)川端達夫氏の祝電
甲4 国民の皆様へ呼び掛け(9月1日アピール)
甲5 羽澤ガーデン解体に関する各紙報道
甲6 羽澤ガーデンを守る会ニュース第7号
甲7 解体差止めの訴え提起に係るステートメント
甲8 上記提訴に関する各紙報道


添付書類
1 申立書副本      3通
2 疎明資料副本    各3通

スポンサーサイト

comment

管理者にだけメッセージを送る

平城宮跡の「土色舗装」に抗議

http://twitter.com/ryomichico/status/254670321087549440

草地をコンクリにすれば、ヒートアイランド化し、温暖化に拍車を掛ける。周知も不十分。国土交通省は再考すべきである。
最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
なかのひと
なかのひと
カウンター
情報提供求む

名前:
メール:
件名:
本文: