本日(11日)、14時より東京地裁113法廷において、羽澤ガーデン環境行政訴訟の口頭弁論が開かれる。
昨日、羽澤ガーデンの保存を願う関係者より、以下の投書があったので、紹介する。
賢者と愚者
文化の保存と破壊者との対照
10月5日の朝日新聞都内版には新宿区と渋谷区の隣接し合う副都心を対照的>に大きく伝えている。
夏目漱石は慶応3年生まれ、日本が近代国家として出発した時期の明治20年(1887年)、政府の命によって2年余のイギリスに留学生活を終えた後に、朝日新聞の文芸部の基礎づくりに活躍し、『坊ちゃん』などを多数の小説や評論を発表した国民的作家である。
そしてロンドン滞在中の漱石の下宿先は、今日もなお大切に保存されているが、新宿区ではこれに刺激されて誕生の地である牛込矢来町に、漱石山房を復元中である。
そのうえ同区は国の文化財登録制度を利用したまちづくりを進め、神楽坂界隈の築50年の古い木造建築4件が有形文化財となったが、 それらは高橋建築事務所社屋(アユミギャラリー)・鈴木家住宅主屋 ・宮城道雄記念館検校の間・矢来音楽堂である。
一方、渋谷区長は漱石の無二の親友であり、旧満鉄総裁や東京市長を歴任した中村是公の旧居である羽沢ガーデンの破壊を一挙に進めようとしているが、この建物は今から100年前に建てられた自然環境と調和した数寄屋風木造建築であり、関東大地震や東京空襲にも奇跡的に生き残った重要文化財に匹敵する建物である。
そして、日本を代表する知識人や文化人の保存の声を無視して、渋谷区と三菱地所はこの地の景観はもとより貴重な建造物も一挙に破壊してマンション計画の暴挙を推し進めようとしている。
さらに、渋谷区は渋谷公会堂のネーミングプライツをサントリーとの契約期限切れで再売り出し中であるが、すでに宮下公園をナイキ・ジャパンに売り渡し、公衆トイレさえ売り出し中、これらは渋谷区民が「このまちを誇りと思う心」を巨大資本への私益幇助そのものである。
隣接し合う新宿区は文化保存に熱意を傾け、一方の渋谷区長は専制的・独善的に文化の破壊に熱中し、市場化される公共空間は「聖域なき構造改革」の対照であり、これは公益と私益の見境のつかない私企業への利益幇助そのものである。
これが賢者愚者の典型である。
朝日新聞の記事は漱石の憤怒を直截に訴えたものであるが、漱石山房と羽沢ガーデンの対照が欠けていたのは残念とは言え、渋谷区長はこれに気付こうとしない!
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