【記事紹介】失われる緑への挽歌

環境アセスメント研究室・代表研究員・柏木暁氏が、川崎市高津区のマンション、パークシティ溝の口の樹木伐採、剪定に関して、環境未来という雑誌に記事を書いている。その一部を紹介して、羽澤ガーデンの樹木に捧げたい。

1.畏敬の樹木は邪魔者か
樹は太古の昔から人間にとって、尊厳なるもの、神聖なるもの、として敬われてきた。
天を摩してそびえる大樹は、人間の能力を越える存在と認められているし、その生命は人間の一生よりはるかに長
い時間を経験したと考えられるからである。
たしかに樹木の年令は、数百年から数千年に及ぶものもあり、人類の歩んできた歴史年代と比べても遠大な歳月をその年輪に刻みこんでいるわけだ。
樹々の老若にかかわらず樹木に霊的なものを感知したのは古代日本人の文化遺産ともいえる。そういう樹木に対する畏敬の念と同時に自然観、信仰心は現代日本人にもかなり色濃く痕跡を残している。
我々日本人が樹木、樹林に理屈抜きで心惹かれる理由は、われわれの父祖の血の痕跡によるものであり、言ってみればそれが民族の体質でもあり、心でもあるということだ。
1年毎の四季を生き、その積み重ねとして一生を送る。同類の生き物としての共感を味わい、そして更に、その樹の生き様に対する驚きと畏れの気持ちさえ抱くことがある。「樹」それ自体孤高の存在だが、自らを偽らず、他を欺くこともない。だが、人間の小賢しさは、伝来の畏怖の念を忘れさせてしまったのだろうか。
自ら計画し自ら植栽した樹林を、日照不足、通風妨害等を理由に伐採・強剪定という問答無用の排除は人間のわがままと言えないだろうか。

2.樹よ、おまえは
子供の頃を思い出すと、あの欅のごつごつした木肌に身をひそめてみたり、遊びの中で幹に手を触れたり、身体にくっつけたりすることはしょっちゅうで、そんな時彼らはとても柔順だったように思う。
私達が育って大人になっていくのと一緒に樹々たちも大きくなり枝を張り巡らし根をおろし始めたようだ。
私はこれまで30年近くも、樹をみるのと一緒に、たえず樹に触れてきた。見るにしても、目が樹にさわっていたような気がするし、指先が幹に触っただけで全体を感じるような関係がいつの間にか出来上がってしまったようだ。
そうして樹々は除々に私の意識のなかにも入り込み、いま私の生の感覚の中に身をひそめていると言ったら笑われるだろうか。
誰にも言えない悲しみを湿った落ち葉で慰めてくれたのもお前だ。
春から初夏、目にも覚めるような新緑、秋に入ると黄褐色に染まり落着いた雰囲気。四季の風物の微妙なうつろいを知らせてくれたり、お前は生命と優しさを育む魔術師のようだ。
お前達が突然消え去った痛々しい切株の前を通るとき肩身の狭い思い越えて「なぜ」「どうして」と問わずにいられない。

3.みどりを守るのは誰か
「自然を守れ!みどりを大切に!」今そういう声は、大きく広がる以前の人間の常識になっている。
樹木といえば、樹齢何千年といわれる屋久島の縄文杉や白神山地のブナの原生林など文化財的に評価の高い樹木、老樹は国家的にも守られなければならないが、私達はそういう史跡・天然記念物よりももっと身近なパークシティ内の無冠の緑を守ることが喫緊の課題である。それは私達の生活環境の重要な部分だからだ。
パークシティ溝の口の植栽樹林は静かに力強く、樹葉のざわめきは鳥たちの鳴き声に和して爽やかに道行く人達に語りかけてくれた。
日本書記巻二に「草木ことごとく能くもの言うことあり」とある。奇異なことではない。詩人や画家ならずともこの草木の言語を解するであろう。
地球の主人は、むしろ「樹」を含めた植物であり、「人」を含めた動物はひたすらその恩恵に浴して生きてきたに過ぎない。
このパークシティという生活空間で、我々と共に生を営んだ樹木達の恩寵に与った者として、業者の餌食に倒れた樹々を救えなかった恥じらいは生涯消えないだろう。

hanezawa2
             羽澤ガーデン

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緑確保の総合的な方針

東京に残された樹林地や農地等の緑は、現在も減少が続いています。こうした状況を重要な課題ととらえて、東京都は区市町村と合同で「緑確保の総合的な方針」を策定いたしました。

① 既存の緑を守る方針(確保することが望ましい緑を明確化)
緑を系統に分類し、都区市町村別、確保区分別に10年間に確保することが望ましい緑の箇所、面積をリスト化、5万分の1の図面に記載・公表
② 緑のまちづくり指針(まちづくりの中で取り組む緑施策)
10年間で、緑の創出を伴うまちづくり事業をリスト化、1万分の1の図面に記載・公表
③ 新たに取り組む施策
緑の確保を一層強化し、緑のまちづくりをさらに進めるために、新たな施策を提示
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/seisaku/midori_kakuho/honbun_zumen.htm
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