【原宿団地】総合設計許可処分の取消訴訟で上告

渋谷区神宮前3丁目の原宿団地建て替え問題で、総合設計許可処分の取消を求める原告らは、控訴審判決を不服として上告した。
以下、上告受理申立理由書である。


平成24年(行ノ)第42号 総合設計許可処分取消上告受理申立事件
申立人 ●●●● 外5名
相手方 東京都

上告受理申立理由書

平成24年4月17日

最高裁判所 御中

上告受理申立人ら訴訟代理人弁護士 本  間  久  雄

●上告受理申立理由の要旨
本件は、東京都知事がなした総合設計許可処分の裁量の逸脱・濫用の有無が争われている事案である。
本件総合設計に際して設けられる広場状公開空地の大半が日照がゼロ時間というものである。このような広場状公開空地では、広場状公開空地に期待される公園としての機能を発揮し得ない。総合設計許可処分をなすにあたって、最も考慮すべき事情は、総合設計によって生み出される公開空地の質である。東京都知事は、総合設計許可処分にあたって最も考慮すべき事項である公開空地の質を全く考慮していない。これは、東京都知事に与えられた裁量の逸脱・濫用にあたる。
最高裁判所の行政庁の裁量処分審査においては、判断過程審査を取り、考慮要素を考慮したかについて、考慮要素をウェイト付けしながら審査をしているところ、原判決は、そのような考慮要素に着目した審査を行うことなく「総合的に考慮」したので「合理的裁量の逸脱があったと認めることができない」と何が「合理的裁量」なのか具体的に理由を述べることなく、極めて抽象的な判断を行った。
したがって、原判決には、判例違反があり、本件上告を受理し、上告受理申立人らの権利救済を速やかに図られたい。

第1 本件の争点
1 本件は、行政事件訴訟法30条(「行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。」)の解釈、すなわち、行政庁の裁量処分の司法統制のあり方が争点となっている。

第2 本件訴訟の経過
1 東京都知事の総合設計許可処分及び上告受理申立人らの提訴
平成21年2月27日、東京都知事は、原宿団地管理組合に対し、原宿住宅団地管理組合らが東京都渋谷区神宮前3丁目37番地に建築予定の建物(以下、かかる建物を「本件建物」といい、本件建物が建築される土地のことを「本件土地」という。)について総合設計許可処分をした(以下、この処分のことを「本件許可処分」という。)。
平成21年3月16日、上告受理申立人らは、東京都建築審査会に対し、平成21年3月16日、本件許可処分の取消しを求めて審査請求をした・
平成21年9月28日、東京都建築審査会は、上告受理申立人らの審査請求につき、審査請求人15名のうち3名に係る部分を却下し、上告受理申立人ら全員を含む審査請求人12名に係る部分を棄却する旨の裁決をした。
平成22年1月22日、上告受理申立人らは、本件許可処分の取消しを求めて東京地方裁判所に訴訟を提起した。
2 上告受理申立人らの主張の概要
(1)はじめに
上告受理申立人らは、一審及び二審において、本件許可処分の違法性について、①総合設計許可要綱の合理性がないこと、②本件建物の総合設計許可要綱への適合性がないこと、③東京都知事が本件許可処分をなすにあたって裁量の逸脱・濫用があることを示す特段の事情があることについて主張立証をしてきた。
本件上告受理申立にあたっては、上告受理申立人らは、③東京都知事が本件許可処分をなすにあたって裁量の逸脱・濫用があることを示す特段の事情があることを重点的に主張していくので、以下では、③の事情のみを再度主張していく。
(2)東京都知事は、本件許可処分について考慮すべき事情を考慮していないこと
ア 総合設計制度とは
総合設計制度は、建築基準法59条の2の規定に基づき、一定規模以上の公開空地の確保等を条件に特定行政庁の建築許可により形態規制等を緩和(主として容積率割り増し)する制度である。この制度の基本は、単純にいえば、公開空地の提供と引き換えに、容積率を与えるというものであると言える(甲38号証332ページ)。
総合設計制度の趣旨は、もともと、市街地では建築物が密集し、公共的な空間に乏しいことから、建築物の周囲に一定の公開空地(一般の通行者が自由に利用できる空間)を確保するという点にある(甲2号証69ページ)。
イ 総合設計許可処分にあたっての重要な考慮要素
前述のように、総合設計制度は、公開空地の確保により市街地環境の整備改善に資する計画を評価しそのことによって市街地の環境の改善を図るという面と、それが確保されれば容積率、高さ制限、斜線制限などを緩和する(いわゆるボーナスを認める)面がある。
このように、総合設計制度は、公開空地の設置(外部経済)と引き換えに計画建物の容積率、高さ制限、斜線制限の緩和(=周辺環境の悪化。外部不経済)を認めるものであるから、総合設計制度によって設けられる公開空地は、容積率の緩和等による周辺環境へのマイナスの影響を補って余りある都市への貢献というプラスの影響が認められるものでなければならない。
それゆえ、総合設計許可処分をなすにあたって、最も考慮すべき事項は、総合設計によって発生する公開空地の質(容積率の緩和等による周辺環境へのマイナスの影響を補って余りある都市への貢献というプラスの影響が認められるものであるか否か)である。
ウ 本件建物の公開空地に重大な瑕疵があること
本件建物の公開空地(以下、「本件空地」という。)は、歩道上空地、広場状空地、ピロティの3つの部分に分かれているが、そのうち、広場状空地は、本件空地全体の約70パーセントの面積を占めている(甲7号証)。
ところが、本件広場状空地は、冬至の日においては、面積の約41パーセントに相当する部分が終日(午前8時から午後4時まで)日影となり、残余の部分においても、冬至の日の日照時間は、大半が4時間以下である(甲6号証の1)。
このような本件広場状空地の日影状況は、建築基準法56条、同法56条の2が規定する日影規制に照らしても不十分なものである(甲36号証。ちなみに、本件広場状空地所在地の用途地域は、第1種中高層住居専用地域である(甲6号証の1))。もし、本件広場状空地を原宿住宅団地地権者以外の者が所有していたとしたら、本件広場状空地は、本件建物建築によって、上記のような劣悪な日影状況で建築基準法の日影規制に照らして極めて長い日影時間となるため、日照権侵害として本件建物の建築差止や損害賠償が認容されるであろう。
本件広場状空地は、日照が不十分のみならず、袋小路状の形状のため、隣地に通り抜けもできず、極めて機能性が悪い(甲6号証の2)。
広場状空地は、公園として用いられることがその性質上予定されている。このことは、東京都作成の公開空地等のみどりづくり指針に関する手引が、広場状空地の機能として、ア歩行者動線との整合(人が溜まる空間と歩行空間を明確に分ける)、イ休養機能、ウ緑陰を掲げている(甲4号証12ページ)ことから明らかである。
公園の主な役割は、子どもの遊び場や近隣の人々の憩いの場である。それゆえ、子どもが楽しく遊んだり、近隣の人々が楽しく語らい、休息を取るためには、日照というものは欠かせない要素である。このことは、各種裁判例(控訴理由書18ページ以下参照。名古屋地裁昭和51年9月3日判決(判例時報832号9ページ)、東京地裁昭和52年2月28日判決(判例時報859号54ページ)、名古屋地裁昭和49年5月25日判決(判例時報756号92ページ))、公開空地や開発行為に伴う提供公園が終日日影となる場合には、公開空地とは認めない、若しくは、公開空地の評価を下げるとする横浜市・さいたま市・東京都の要綱(甲5号証、甲42号証の3、甲45号証)から明らかである。
本件広場状空地は、日照が極めて悪く(甲6号証の1)、通り抜けもできないような(甲6号証の2)空地であり、前述の公開空地等のみどりづくり指針に関する手引きや各種裁判例・要綱に照らして、広場状空地に期待される機能(=公園)が発揮できない状態となっており、極めて重大な瑕疵がある。
エ 東京都知事は、本件許可処分にあたって考慮すべき事項を考慮していないこと
ウで述べたような本件空地の劣悪さについては、総合設計適用の可否を巡る公聴会に際して、近隣住民から東京都知事に対して提出された意見書でも指摘され(甲30号証の1、2)、公聴会においても公述人から指摘されていた(甲31号証)ところである。
それにも関わらず、東京都知事は、本件空地の質の劣悪さについて何らの考慮もせず、本件建物の本件要綱の適合性の有無を形式的に審査しただけで、原宿住宅団地管理組合に対し、総合設計許可処分を出してしまった(調査意見(甲32号証)には、本件空地の質についての調査意見はなく、東京都建築審査会における総合設計許可処分に同意をなすか否かの審議(甲33号証)においても、本件空地の質について真摯に議論された形跡はなかった。)。そればかりか、東京都知事は、本件広場状空地に対し、漫然と係数1.2という通常の公開空地よりも高い評価を与えてしまったのである。
このように、東京都知事は、本件許可処分にあたって、公開空地の質という当然に考慮すべき事項を考慮しておらず、本件許可処分には、判断過程に瑕疵があり、裁量の逸脱・濫用にあたる。
3 上告受理申立人らの一審・二審での敗訴及び上告・上告受理申立て提起
(1)平成23年9月30日、一審である東京地方裁判所は、上告受理申立人ら敗訴の判決を下した。判決の内容は、原告の主張を列挙した後に、被告の主張を列挙し、「一定の合理性があるものというべきである。」、「未だ特定行政庁の合理的裁量の範囲内のものである。」、「直ちにその裁量権の範囲から逸脱した不合理なものとまでは言い難いものというべきである。」などと締めくくるだけであり、処分にあたって何が重要な考慮要素なのか、その考慮すべき重要な事項を考慮したか否かという点に着目したいわゆる判断過程審査を全く行っていなかった。
(2)平成24年3月28日、二審である東京高等裁判所は、上告受理申立人ら敗訴の判決を下した。判決の内容は、「(公開空地の日照が不十分である点なども含めて)総合的に考慮した上で本件許可処分がされたものと認められる。そして、その判断に合理的裁量の逸脱があったと認めることができないことは、上記引用に係る原判決の判示するとおりであり、その他、控訴人らがるる主張するところを考慮しても、本件許可処分が合理的裁量の範囲を逸脱した違法なものであると認めることはできない。」(二審判決13ページ)というものであり、一審判決と同様、処分にあたって何が重要な考慮要素なのか、その考慮すべき重要な事項を考慮したか否かという点に着目したいわゆる判断過程審査を全く行っていなかった。
(3)平成24年3月29日、上告受理申立人らは、二審判決を不服として、最高裁判所に上告及び上告受理申立を行った。

第3 原判決は早急に破棄されなければならないこと~原判決には判例違反があること~
1 原判決に対する批判
本件においては、上告受理申立人らは、後述のように、最高裁平成18年2月7日判決(民集60・2・401)や最高裁平成18年12月11日判決(民集60・9・3249)が用いた判断過程審査の枠組みにのっとり、東京都知事のなした行政処分(総合設計許可処分)について、公開空地の質という最も重要な考慮事項を考慮しておらず違法であることを、十分に事実関係を掲げて主張立証したにも関わらず、原審は、「(公開空地の日照が悪いことも含めて)総合的に考慮した上で本件許可処分がされたものと認められる。そして、その判断に合理的裁量の逸脱があったと認めることができないことは、上記引用に係る原判決の判示するとおりであり、その他、控訴人らがるる主張するところを考慮しても、本件許可処分を考慮しても、本件許可処分が合理的裁量の範囲を逸脱した違法なものであると認めることはできない。」と判示し、上告人らの主張を「総合的に考慮」、「合理的裁量の範囲」という言葉で一蹴してしまっている。
そもそも、どのような判断を下す場合であったとしても(例えば、昼食にどのようなメニューを食べるのかという単純な判断であったとしても)、種々の事情が「総合的に考慮」されるのであり、上告人らの主張する重要な考慮事項の考慮の有無を審理することなく、「総合的な考慮」があるから「合理的裁量の逸脱」がなかったとする原審の判断は、国民が行政庁の裁量処分を訴訟によって争う途を実質的に閉ざすものである。行政決定は、「諸般の事情を総合考慮」する性質を有するものであるからこそ、最高裁は、その違法性の判断にあたって、判断要素の選択・判断過程の合理性欠如に着目した裁量統制手法、すなわち判断過程審査を用いているのである(「条解行政事件訴訟法(第3版補正版)」(弘文堂)535ページ参照)。
「総合的に考慮」、「合理的裁量の範囲」といった「マジックワード」の一言で東京都知事の裁量の逸脱・濫用はないとする原審の判断のあり方は、行政処分を訴訟によって争う途を実質的に閉ざすものであり、ひいては、国民の裁判を受ける権利(憲法32条)すら有名無実のものとしかねない。裁量不審理原則を取っていた戦前の行政裁判所に後戻りしたかのような原審の判断は、早急に是正されなければならない。
2 原判決に最高裁判所の相反する判断があること
(1)近年の裁量審査における最高裁判所の判例(南博方・高橋滋編集「条解行政事件訴訟法第3版補正版」(弘文堂)534ページ以下参照)
近時、判例法は、判断過程審査手法を用い、行政裁量に係る審査密度を高める傾向性を強めている。その嚆矢となったのが、公立学校施設の目的外使用不許可処分につき国家賠償法上の違法が争われた事例において、処分に係る考慮要素に着目した判断過程統制手法を用いた最高裁判決(最高裁平成18年2月7日判決民集60・2・401)である。同判決は、目的外使用不許可処分につき「学校教育上支障があれば使用を許可できない」が、「支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用を許可しないこともできる」と述べて行政裁量を肯定した上で、裁量権行使における「判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らして著しく合理性を欠くものと認められる場合に限って」違法になるとし、当該処分は、「重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠」き、裁量権を逸脱したとする。同判決では、「社会通念に照らし著しく妥当性を欠く」という裁量審査基準について、「判断要素の選択や判断過程の合理性を欠くところがないか検討する」という判断過程審査手法と結合させている。なお、上記平成18年判決は、行政決定につき「諸般の事情を総合考慮」する必要の存在を根拠に、判断要素の選択・判断過程の合理性欠如に着目した裁量統制手法を導いていることに注目される。このことは、審査密度向上に係る特別な根拠付けなしに、当該行政決定につき行政庁に求められる一般的な総合考慮義務のみを根拠に、考慮要素の「重み付け」を伴う判断過程統制手法が採用可能なことを示しており、判例法の展開上極めて重要である。
上記平成18年判決の後、最高裁が判断過程統制手法を用いた代表的事例として、以下のようなものがある。

①最高裁平成18年3月23日判決(判例時報1929・37)
服役者からの親書を発信不許可とした刑務所長の処分に係る国家賠償請求事案において、監獄法46条2項に規定された「特に必要があると認められる場合」につき、憲法21条の趣旨・目的を踏まえた解釈により具体的な解釈準則を抽出し、上記不許可処分は「障害が生ずる相当の蓋然性があるかどうかについて考慮しないで」され、本件において「障害が生ずる相当の蓋然性があるということができないことも明らか」として裁量権の逸脱・濫用を認めた。
②最高裁平成18年9月4日判決(判例時報1948・26)
都市計画事業認可の前提となる都市計画決定の裁量権逸脱・濫用が争われた事案において、裁量判断の合理性欠如につき判定する具体的な事実の確定がされていないとして、原審を破棄・差戻しとした。同判決は、判断過程統制手法を正面から使ってはいないが、行政決定の合理性を判断するための考慮要素を具体的に摘出し、その考慮要素に係る考慮不尽が合理性欠如でないことにつき具体的事実の基礎づけが必要とすることにより、考慮不尽に係る審査密度を上乗せする法理が示されたものと考えられる。
③最高裁平成18年12月11日判決(民集60・9・3249)
都市計画事業認可の前提となる都市計画変更決定の違法が争われた事例において、都市計画決定につき「行政庁の広範な裁量」を肯定しつつ、前掲最高裁平成18年2月7日の法理をほぼ踏襲するかたちで、計画裁量についても考慮要素に着目した判断過程統制手法を採用した。同判決では、都市計画変更決定における①環境への影響に対する考慮、②計画的条件・地理的条件・事業的条件に係る考慮が検討され、①では、環境影響評価書の内容への配慮、公害防止計画の適合等が、②では、地下式等の代替案との比較、事業費算定方法の合理性等がそれぞれ検討され、裁量権の逸脱・濫用なしという結論が導かれている。
④最高裁平成18年10月26日(判例時報1953・122)
村の発注する公共工事の指名競争入札における指名回避措置について、指名競争入札の運用実態・指名回避措置を受けた事業者の事情等を具体的に検討した上で、考慮要素に着目した判断過程審査を行い、考慮不尽・過大考慮により当該措置を違法とした。
⑤最高裁平成19年12月7日民集61・9・3290
一般公共海岸区域の占有許可につき裁量を肯定した上で、係争処分につき「考慮すべきでない事項を考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠」くとした。同判決は、効果裁量を肯定した後、係争処分に係る事情をピックアップし、直截的に他事考慮・考慮不尽による社会観念審査に持ち込んでいる。
(2)本件で、判断過程審査が取られるべきであること
前述のように、最高裁判所の判例においては、政策実現の手法が高度の専門技術的判断や利害関係人の聴聞あるいは審議会の諮問手続を要する行政決定等の裁量審査において、判断過程審査を採用し、①行政の判断形成過程において、考慮すべき事項・価値を考慮し、考慮すべきでない事項・価値を考慮(他事考慮)していないか、②考慮要素のバランシングは適切になされているか、その際、行政庁の恣意・不正な動機・独断が働いていないか(実体的要素)、③基礎的事実と結論の間に合理性があるか、といった点が審査されてきた(大浜啓吉「行政法総論第三版行政法講義Ⅰ」(岩波書店)271ページ)。
本件総合設計許可処分の場合、「市街地の環境の整備改善に資する」(建築基準法59条の2)か否かという高度な専門技術的判断を要するものである上、処分をなすにあたって、公聴会を経る必要がある(甲26号証)、建築審査会の同意が必要である(建築基準法59条の2第2項、同法44条2項)、といった手続を要する。
したがって、本件では、判断過程審査によって裁量処分を審査すべきであり、処分にあたって何が重要な考慮要素であるかを一切吟味することなく、処分にあたって「総合的に考慮」したので、「合理的な裁量の逸脱があったと認めることができない」などと判示した原判決は、(1)で述べた最高裁判所の判例に明らかに相反しており、破棄を免れない。

第4 結語
近時の最高裁判決が行っている判断過程における考慮要素のウェイト付けに基づく吟味(判断過程審査)をすることなく、「総合的に考慮」したので、「合理的な裁量の逸脱があったと認めることができない」などと判示するような原判決がまかり通るようになると、総合設計許可処分の取消訴訟において、原告が勝訴することは、およそ不可能となってしまう(総合設計は、その名のとおり、許可処分にあたって、種々の事情(交通面、安全面、防火面及び衛生面等)を総合的に考慮するのは当然である。上告受理申立人らは、種々の考慮要素のうち、東京都知事は、一番重要な考慮要素(=公開空地の質)を考慮しておらず、裁量の逸脱・濫用となっていると主張しているのである。)。
このような原判決は、総合設計許可処分の取消訴訟において、近隣住民に原告適格を認めた最高裁平成14年1月22日判決(民集56・1・46)、最高裁平成14年3月28日判決(民集56・3・613)を画餅に帰すものであるばかりか、行政裁量の審査密度の向上を試みてきた学説・判例の傾向(塩野宏「行政法Ⅰ(第5版)行政法総論」(有斐閣)135ページ)に逆行し、日本の行政訴訟を裁量不審理原則を取っていた戦前の行政裁判所の時代に戻すものである。原判決が確定し、先例となることによる日本の行政訴訟に対する悪影響は計り知れない。
したがって、本件上告を受理し、原判決を破棄することで、上告受理申立人らの権利救済を図るとともに、日本の行政訴訟を真に実効的なものとされたい。

附属書類
上告受理申立理由書副本  7通

以 上
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