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【ホライゾン学園】控訴審準備書面を提出

渋谷区が渋谷区立神宮前小学校の一部を、学校法人ホライゾン学園及びNPO法人国際交流学級に無償貸与して、神宮前国際交流学級と称する私立インターナショナルスクールを開設させている事件に関する住民訴訟は、一審では原告側主張は棄却されたが、特に無償貸与の部分の違法性を争い控訴した。
以下は、控訴審の準備書面である。


平成25年10月8日

東京高等裁判所第8民事部 御中

控訴人ら訴訟代理人弁護士 本  間  久  雄


第1 公共施設使用料免除が争点となった裁判例の傾向
1 はじめに
 本件は、渋谷区教育委員会が、ホライゾン学園等に対してなした行政財産の使用料を免除することの違法性が控訴審における最大かつ唯一の争点となっている。
本章においては、本件のように行政財産の使用料免除の違法性が争われた裁判例を紹介していく。
2 千葉地裁昭和63年10月31日判決
 千葉地裁昭和63年10月31日判決(行集41巻9号1557ページ、判例地方自治55号26ページ)は、元町長の町民葬を執行した葬儀委員会に対し、式場である公民館の使用料を免除したことが争われた事例であるが、使用料免除の違法性の有無について、以下のような規範を定立している。
 「右条例5条1項によると、公民館の使用料の減額(5割)基準として、町の機関以外の官公署が使用する場合及び教育又は社会福祉に関する団体が、その目的を達成するために使用する場合が、またその免除基準として、町(町の機関を含む)、国又は公共団体が公務上使用するときが、それぞれ例示されており、同条2項において、「前項に規定する場合のほか、特に町長が認めたときは、使用料を減免することができる。」とされている。
 右規定の趣旨に照らすと、同条2項により町長が使用料を免除することができる場合には、町や国その他の公共団体が自らその事務を執行するために使用する場合に準ずるような公益性の高い場合を含むものと解するのが相当である。」
3 神戸地裁平成12年2月29日判決
 神戸地裁平成12年2月29日判決(判例地方自治207号72ページ)は、神社の祭礼実行委員会による学校施設の使用料を免除したことが争われた事例であるが、使用料免除の違法性の有無について、特に規範定立をすることなく、当該使用料免除が、「公益のために使用する場合」に該当しないので違法であると結論づけている。
4 名古屋高裁平成17年4月13日判決
 名古屋高裁平成17年4月13日判決(判例タイムズ1223号170ページ)は、三重県の南勢町の住民である原告が、南勢町長において、南勢町文化協会等が南勢町町民文化会館で主催したチャリティーショーの使用料とその準備のための使用料、体育協会及び遺族会等がその活動のために本件会館を使用した際の使用料を、南勢町における南勢町町民文化会館の設置及び管理に関する条例に定める「特別な事由」がある場合に該当するとして、いずれも免除したことの違法性が問題となった事案である。同判決は、使用料免除の違法性の有無について、以下のような規範を定立している。
 「この「特別な事由」の意義は、本件会館は行政財産であること、及び同会館の設置目的が、町民の文化、教養の向上及び福祉の増進を図り、住みよい地域社会を形成することにある(本件条例2条)ことを考慮すると、当該事業ないし催しに対する南勢町の関わり合いの程度、当該事業ないし催しの主催者の性格及び主催者と南勢町の関わり合いの程度、当該事業ないし催しの目的・内容、当該事業ないし催しにつき主催者が使用料免除を受ける必要性の程度等の事情を総合考慮し、公益性の観点から使用料を免除する必要性ないし相当性が特に高いと認められる場合を意味すると解される。」
5 小括
 このように、公共施設使用料免除が争点となった裁判例において、使用料免除をなすにあたっては、高い必要性・相当性・公益性が必要であると判示されている。

第2 原判決は、従前の裁判例の傾向に真正面から反していること
1 第1で述べたとおり、公共施設使用料免除が争点となった裁判例において、使用料免除をなすにあたっては、高い必要性・相当性・公益性を要求されると判示されている。
 しかしながら、原判決は、本件各免除の違法性の判断基準について、「(本件各免除の)裁量判断の当否に関する司法審査については、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の範囲の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものである。」とし、「特に必要があると認めるとき」の該当性判断にあたって、政策目的も加味することも許される(原判決70ページ)と極めて緩やかな判断基準を定立している。
 「盗人にも三分の理」という諺があるが、どのように非常識で社会通念を欠く行為であれ、それなりに理屈をつけようと思えばつけられる。一見してえこひいきにしか見えず、合理性の見受けられない使用料免除であったとしても、後付けで、免除の必要性や公益性を修飾することができる。原判決のいう「社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合」に該当する使用料免除は、およそ考えられない。原判決の判断基準は、実質的に使用料免除の違法性を住民訴訟で争う途を閉ざしているに等しい。
2 かかる判断基準は、渋谷区行政財産使用料条例5条3号の文言から明らかに乖離している(控訴理由書2ページ)上、使用料免除をなすにあたって、高い必要性・相当性・公益性が必要であるとした従前の裁判例の傾向にも真正面から反している。
 首長等が、公の施設の設置及びその管理に関する条例中の使用料免除規定に基づき、公共施設の使用料の支払いを免除ないし減額することはそれほど希ではないと考えられるが、使用料免除の違法性が争われた裁判例は、第1で言及した程度である(判例タイムズ1223号171ページ参照)。
 万一、使用料免除を幅広く認めることにつながりかねない原審判決が確定し、数少ない公共施設使用料免除に関する先例となるような事態になると、地方公共団体に使用料免除を濫発させ、ひいては、様々な弊害(地方公共団体の幹部と親しい関係にある者・団体に対して、情実で使用料を免除する等)を発生させることにつながりかねない。

第3 本件各使用料免除に高い必要性・相当性・公益性は存しないこと
1 原判決は、ア使用の目的及び態様、イ使用の日時、場所及び使用者の範囲並びに本件各使用許可による弊害の有無等、ウ本件各使用許可による影響等、エ代替施設確保の困難性等の本件各使用許可の必要性等、オ本件各免除の財務的側面からの適否を検討して、本件各使用料免除に違法性は認められないと結論づけている。
 しかしながら、原判決が掲げるイないしエの事情は、本件各施設を国際港リュ学級以外のインターナショナルスクールが借りていたとしても全く同様の事情であるといえよう。
2 原判決の掲げるアの事情についても、原判決は、「本件各使用許可の目的は、在日トルコ人子弟を中心とした児童に初等教育を授けるとともに、本件小学校に通学する日本人児童やその家族等との日常的な交流を通じて、被告区と本件都市協定により友好関係にあるトルコとの国際交流を促進することにあるといえる。」(原判決84ページ)としているが、被控訴人区には、トルコ人に限らず、数多くの外国人が居住ないし就労していることは、周知の事実であるし、被控訴人区内の在外公館は、23箇所もあり(被控訴人区ホームページ)、あえてトルコ及びトルコ人子弟のみを優遇して初等教育を施す必要性は高くないし、他の外国人から見ると、かかる被控訴人区の対応は、トルコ人のみを強く優遇する差別であるとも受け止められかねない。
 原判決85ページが指摘しているとおり、国際交流学級は、英語教育が行われていて、そのカリキュラムもインターナショナルスクールであるホライゾン学園のカリキュラムとほぼ同一である(このことと、国際交流学級に、トルコ人以外の子弟も多数在籍している(乙59号証、乙66号証、証人ケナン)ことを踏まえると、国際交流学級は、取り立てて顕著な特色の無いインターナショナルスクールであるといえよう。)。
 被控訴人らの主張するように公立学校において国際交流の必要性が認められるとしても、公立学校の空き教室を使用料の支払えないような財務基盤の脆弱な国際交流学級(しかも、前述のように、その教育内容は、他のインターナショナルスクールと大差の無いものである。)に貸与する必要はなく、財務状況が健全なインターナショナルスクールに貸与すべきである。原判決は、国際交流学級の財務状況について、「国際交流学級を運営するホライゾン学園等の財務状況を見ても、近年債務超過額の減少が見られるとはいえ、授業料収入と寄付金を借入金の返済に充ててようやくバランスをとっていて、債務超過や収支構造に改善が見られない財務状況」であると判示している(原判決89ページ)が、かような財務状況ならば、学級の運営に重大な支障が及ぶことは容易に想起でき、教育の質の低下やひいては学級の閉鎖という子供の教育にとって最悪の事態まで起こりかねない。このような国際交流学級に他のインターナショナルスクールを差し置いて、神宮前小学校の空き教室を無償で貸与する必要は全くない(したがって、原判決89ページのオの検討内容は、全く理由になっていない。)。
 神宮前小学校は、表参道という東京の中でもトップクラスの一等地に所在している。それにも関わらず、被控訴人らは、国際交流学級に対し、無償で神宮前小学校の空き教室を貸与しているのである。
 被控訴人らが、国際交流学級に神宮前小学校の空き教室を貸与するに至った動機は、トルコ大使が、桑原区長にホライゾン学園を紹介したという一点に尽きる。上記紹介は、トルコ国の正式な紹介ではなく(このことは、調査嘱託結果からも明らかである。)、あくまでトルコ大使の私的な紹介に過ぎない。区民への説明責任という観点や、地方自治法2条14項(最小の経費で最大の効果を挙げる)の趣旨からいって、本来ならば、諮問委員会を立ち上げるなどして、候補となるべきインターナショナルスクールの教育内容・財務状況等を審査して、空き教室を貸与すべきインターナショナルスクールを決定すべきであった。
 トルコ大使に紹介されたからといって、一インターナショナルスクールにいきなり空き教室を貸与を決定し(しかも、ホライゾン学園の財務状況が悪いことを被控訴人らが認識したのは、平成18年12月11日のホライゾン学園に対する貸与決定後であった(乙4号証、乙73号証、乙57号証)。)、さらには、使用料を免除してしまう被控訴人らの行為は、独断専行と評すべきものである。
3 以上のように、本件各使用料免除に高い必要性・相当性・公益性は存しない。そして、このことについて、原判決も自認しており、原判決は、「我が国においては、外国人児童といえども、義務教育については、公立学校で受け入れがされていて、本件小学校で在日トルコ人子弟を受け入れて教育サービスを提供することも十分可能であることからすると、在日トルコ人子弟のみを優遇することにいささか疑問がないではない。」(原判決86ページ)、「トルコ人以外の外国人子弟を就学させている点についても、…他の外国人児童が児童総数の過半数を超えるなど、在日トルコ人子弟を中心とした児童に初等教育を授ける施設を提供するという本来の目的が全く失われ、他の合理的理由も見いだせないといった事態とならない限り、不当・不合理とはいえない。(※控訴人ら注:逆をいえば、そのような事態となった場合、不当・不合理になる。)」(原判決87ページ)、「国際交流学級の児童の中に占める在日トルコ人子弟の比率の減少傾向、収支の改善状況等に鑑みれば、被告区(本件委員会)においては、営利活動としてのインターナショナルスクールのために公有の教育財産(行政財産)である本件小学校の施設を無償で使用許可しているとの疑念を区民に抱かれないように、不断に、その活動、運営実態、収支状況等を把握し、使用料免除の許否等を検討していく必要があるものと考えられる。」(原判決96ページ)などと判示している。

第4 結語
1 本件各使用料免除に高い必要性・相当性・公益性は存しない。このことは、原判決が、本件各使用許可の目的について、「被告区の国際交流事業を促進・発展させるという目的には、被告区の実情に鑑み国際儀礼の観点も含めて考えれば、一定の公共性、公益性が認められるとする判断も一概に否定することはできない。」(原判決87ページ)という婉曲的な表現にとどめていることからも明らかである。
2 公共施設の使用料免除の違法性について、政策目的も加味した上で、「社会通念に照らし著しく妥当性を欠く」場合にしか違法性が認められないとする原判決の判断は、条例の文言(「特に必要があると認めるとき」)から余りにかけ離れている上、従前の使用料免除に関する住民訴訟の裁判例の傾向からもかけ離れている。
 したがって、原判決の判断には重大な瑕疵があり、破棄は免れず、控訴審に置かれては、直ちに控訴の趣旨のとおりの判決を下されたい。

以 上
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