【報告】監査請求書詳細

渋谷区職員措置請求書(住民監査請求書)

請 求 の 趣 旨

1.渋谷区代表監査委員浅生博介は、直ちにその職を辞せよ。
2.渋谷区代表監査委員浅生博介は、平成17年3月17日より現在までに、渋谷区より受け取った監査委員としての報酬を、渋谷区長桑原敏武と連帯して、渋谷区へ返還せよ。

請 求 の 原 因

第1 地方公共団体の監査委員
 地方公共団体の監査委員は、執行機関から独立した機関であり、経常的に監査を行うこととされている。地方自治法199条では、監査委員の職務を定めているが、これらの職務遂行に要請されることは、執行機関から独立、特に首長からの独立であることは論を待たない。
 又、監査委員は、その職務を遂行するにあたっては、常に公正不偏の態度を保持して監査をしなければならない(地方自治法198条の三)。
 以上、監査委員が執行機関から独立し公正不偏性を保持して職務を遂行することが、法の要請するところであることは明らかである。

第2 政党支部又は政治団体の会計責任者
 自由民主党東京都渋谷区第三支部(村上英子都議が代表)とは、自由民主党の支部である。桑原敏武を支援する会とは、現職渋谷区長桑原敏武の政治団体である。
政党支部又は政治団体の会計責任者とは、政党支部又は政治団体の代表者に次ぐナンバー2の要職であり、政治資金規正法に基づく政治資金収支報告書を作成するという、極めて重大な責任を負っている。

第3 事件の概要

1.渋谷区代表監査委員浅生博介は、平成17年3月17日より渋谷区監査委員に就任し、平成19年4月1日より渋谷区代表監査委員に就任して、現在に至っている。

2.渋谷区代表監査委員浅生博介は、平成17年2月18日から平成20年6月11日までの間、「自由民主党東京都渋谷区第三支部」の会計責任者の職に就いていた。(甲1号証)

3.渋谷区代表監査委員浅生博介は、平成17年2月18日から平成20年4月1日までの間、渋谷区長桑原敏武の政治団体である「桑原敏武を支援する会」の会計責任者の職に就いていた。(甲2号証)

4.渋谷区長桑原敏武は、前回の選挙で自由民主党の推薦を受けて当選している。自民党東京都支部連合会から30万円の推薦料、自民党渋谷支部から340万円の寄付を受け取っている。(甲3号証)

5.従って、「自由民主党東京都渋谷区第三支部」の会計責任者であり、渋谷区長桑原敏武の政治団体である「桑原敏武を支援する会」の会計責任者であった浅生博介が、渋谷区長の任命を受けて渋谷区監査委員に就任し、その職務を遂行することは、地方自治法198条の三に抵触し、地方公共団体に監査制度を設けた地方自治法の要請する趣旨に背反するものであり違法である。
 よって、浅生博介への給与の支払いは、違法若しくは不当な公金の支出となり、既に支払われた分については返還の対象となり、今後、支払われる分については差し止めの対象となる。
 




第4 本件の違法性について

1.違法性、不当性の解釈について(最新地方自治講座4 住民訴訟 園部逸夫 編 27ページ)
 地方自治法242条には『普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体のこうむった損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。』とある。
 ここでいう違法というのは、当該事件に適用されるべき法に違反していることを意味するが、個別の実定法に形式的に違反している場合はもとより、当該実定法の目的に反したり、当該行為の程度が法の予定する程度を超えている場合をも含むものである。また、当該事件に適用されるべき実定法がないときは条理が判断基準となり、一般人の健全な良識に照らして違法性の有無が決定されることになる。また、不当というのは、単に法に違反していないというだけでなく、法の趣旨や目的に適合した解釈、運用、適用という面からみて、適当又は妥当であると認めることができない場合を意味するものと考えられる。この違法又は不当の判断は、実体的な判断としてなされるものであり、監査請求自体は、請求者が違法又は不当であると考えた場合にできるのであって、結果的に違法又は不当と認められなかった場合においても、その監査請求自体が不適法となるわけではない。

2.財務会計行為の違法性とその前提となる行為の違法性の関連
 現行制度の下では、住民監査請求の対象となるのは、地方公共団体の財務会計行為のみであり、一般的な行政行為については認められていない。但し、財務会計行為には、その前提となる行為が存在することが多く、両者の間に、密接不可分の関係にあるとみられる場合は、前提行為の違法は、後行財務行為に承継されるとみるべきである。
 この点については、住民訴訟に対する最高裁判例があり、以下引用する。
「地方自治法242条の2の住民訴訟の対象が普通地方公共団体の執行機関又は職員の違法な財務会計上の行為又は怠る事実に限られることは、同条の規定に照らして明らかであるが、上記の行為が違法となるのは、単にそれ自体が直接法令に違反するだけでなく、その原因となる行為が法令に違反して許されない場合の財務会計上の行為もまた、違法となるのである。」(最高裁昭和46年(行ツ)第69号同52年7月13日大法廷判決・民集31巻4号533頁参照)

3.本件の違法性
 地方自治法が地方公共団体の監査委員に要請しているところは、執行機関からの独立と、その職務を遂行するにあたっての公正不偏の精神であることは明らかである。
 とすれば、平成17年2月18日に自由民主党東京都渋谷区第三支部と渋谷区長桑原敏武の政治団体である「桑原敏武を支援する会」の会計責任者に就任した浅生博介が、すなわち執行機関の長である桑原敏武の政治的有力支援者である同氏が、同年3月17日に渋谷区長の任命を受けて渋谷区監査委員に就任することは、地方自治法198条の三に抵触し、地方公共団体に監査制度を設けた地方自治法の要請する趣旨に背反するものであり違法である。浅生博介が渋谷区長の任命を受けて監査委員に就任するという、財務会計行為の前提となる行為が違法なのであるから、同氏に今まで支払われてきた給与は返還されなければならないし、今後、支払われるであろう給与は差し止められなければならない。
 給与の返還にあたっては、監査委員の任命権者は渋谷区長であるから、本人と渋谷区長で連帯して返還するのが道理であると思料する。
 尚、本年6月11日に渋谷区代表監査委員浅生博介は自由民主党東京都渋谷区第三支部の会計責任者を辞任し、本年4月2日に政治団体「桑原敏武を支援する会」は解散しているが、これらは本件住民監査請求に何ら影響を与えるものではない。
 それよりも、これらの事実は、本件マスコミ報道(甲4号証)を察知してなされたものであり、同氏や渋谷区長が本件の違法性を十分に認識しており、違法性を追及されることを恐れて、辞任をしたものであると考えられる。しかしながら、本来は監査委員を辞職しなければならなかったのである。

第5 渋谷区代表監査委員浅生博介と渋谷区長桑原敏武の傲慢無礼な対応
 請求人は、本件に関して、渋谷区代表監査委員浅生博介と渋谷区長桑原敏武に対して、6月10日付で公開質問状を提出している(甲5号証)。両氏は、これには何ら回答をせず、本件を察知したマスコミ各社には意味不明の釈明文書(甲6号証)をFAXで流している。
 請求人はそれを受けて、6月17日に再公開質問状を提出したが(甲7号証)、やはり何ら回答も連絡すらない。桑原区長の、都合の悪い事には一切答えようとしない姿勢は、区民を愚弄する傲慢無礼な対応であると断じられてもしかたがない。請求人は、渋谷区のこれらの姿勢を正すためにも、本住民監査請求を提出するに至った。


結   語

 地方公共団体の長の政治的有力支援者が、その地方公共団体の監査委員に就任することは違法若しくは不当である。
 よって、本件は地方自治法242条第1項に該当し、渋谷区監査委員に同法242第4項に基づく、必要な措置を講ずべき事の勧告を請求する。

theme : 政治・地方自治・選挙
genre : 政治・経済

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