

12月1日付東京新聞で、渋谷区立神宮前小学校に開設された国際交流学級について大きく報道されました。その全文を掲載いたします。
東京・表参道。その一角の渋谷区立神宮前小学校に昨春、「国際交流学級」が設けられた。ところが、運営は私立の学校法人(インターナショナルスクール)で高額の授業料も取っている。「これでは施設の無料供与」と疑問を抱いた住民たちは区を追及。今年九月、学校施設の使用許可取り消しを求めて提訴した。一方、学校法人にはトルコのイスラム団体の影もちらつく。
華やかな表参道から横道にそれると、レトロな趣の神宮前小学校の正門があった。学校沿いに道を行くと裏門。看板には日本語で「神宮前国際交流学級」、英語で「ホライゾン日本・インターナショナルスクール渋谷校」と記されていた。
訴状などによると、国際交流学級設置までの経緯は次のようになる。
2005年9月、渋谷区はトルコのイスタンブール市ウスキュダル区と姉妹都市協定を締結。間もなく、トルコ大使館のソルマズ・ウナイドウン前大使から桑原敏武渋谷区長にトルコ人子弟への教育施設提供の要望があり、渋谷区はこれを受入れた。この後、大使館から運営主体に学校法人・ホライゾンが紹介されたという。
保護者や区議会の説明では懸念の声も上がったが、国際交流学級は昨春に開校。現在も校舎の一部を使っている。しかし、児童・生徒数三十人余りの同学級は全員外国人(授業は英語)で、入学時には授業料と合わせ二百十万円余の費用がかかることから「営利団体への施設の無償提供では」という疑問が上がり、住民の一部は今年六月に区に監査を請求。
だが、八月に棄却されたため、翌月、東京地裁に区を相手取り、施設の使用許可の取り消しなどを求める訴訟を提訴した。
インターナショナルスクールのホライゾン学園は学校教育法に基づき、神奈川県から各種学校として03年に認可され、同年四月、横浜市鶴見区で開校した。ちなみに教員の国籍はさまざまだ。同学園のホームページには今夏まで「横浜校と渋谷校の二つのキャンパス」と記されていたが、現在は「渋谷校」の表記を削除している。
一方、神宮前小学校の本年度学校経営方針には、休み時間、運動会、音楽会などを挙げ「国際交流学級との日常的な交流」が掲げられている。
ただ、ホライゾン学園の活動は行政でも問題視されている。法人を認可した神奈川県学事振興課の担当者は「渋谷校を開くなら法人の(場所や目的、事業内容などを定めた)寄附行為を変えるか、新たに東京都に法人の認可を求めなくてはならない。こちらには寄附行為の変更の申請は出ていない」と話す。東京都私学行政課の担当者は「学校法人の認可の申請は出ていない。営利活動をしているなら、区立小の課外活動とは言い難い。区の対応がわかりにくい」と言う。
事情を聴こうと、神宮前小学校に問い合せたが「区教委の許可が必要」(副校長)。その区教委は「裁判で係争中なのでお答えできない」とし、桑原区長も同様に取材を拒んだ。
取材を進めると、このホライゾン学園にトルコの非公然イスラム団体との関係が浮かびあがってきた。トルコ人ファトウッラー・ギュレン氏を指導者とする通称「ファトウッラージュ」という組織だ。同学園には複数の企業も関係している。同学園のオズカン・レジュプ初代理事長は現在、外国語学校(トルコ中央アジア文化センター)を運営するバハール・エデユケーション社(渋谷区)や、貿易業などを営むバハール社(港区)の社長を兼務。ちなみにエデユケーション社はホライゾン学園横浜校に土地と建物を無償譲渡している。
このうち、登記上、バハール社の取締役となっている日本人男性は「名義を貸しただけ」と前置きしつつ「あのグループはファトウッラージュのメンバーとシンパたち。今年四月に会った際に渋谷に学校を持ったと話していた」と証言した。
では、この団体はどんな団体なのか。ファトウッラージュはトルコ人の故サイード・ヌルシー師を教祖とする「ヌルジュ」と呼ばれるイスラム運動の分派で独自の金融機関やメデイアも持つ。トルコ人記者の一人は「宗教色を極力抑え、慈悲や寛容を強調し、政治的には公には体制派。でも、カモフラージュという見方も少なくない。社会に静かに浸透していく戦略を持つ」と語る。
政教分離が国是であるトルコの国軍は1980年代以来、しばしば軍内の同派メンバーを摘発、追放。96年には検察当局が「イスラム国家樹立のため、政府転覆の陰謀を企てた」と訴追した(最高裁で無罪)。
各国に学校開設などで進出し、日本ではここ数年、断食明けの食事(イフタール)会をエデユケーション社が主催している。ファトウッラージュ系のトルコ紙「ザマン(時代)」紙によると、小池百合子元防衛相や元拓大教授の佐々木良昭氏らも参加した。2005年には、当時の小泉純一郎首相が公邸にホライゾン学園の児童らを招いており、前の二人と併せ「自衛隊のイスラム派遣」推進派への“食い込み”が見られる。
一方、各国の治安当局はファトウッラージュの進出を警戒し、トルコ紙「ミリエト」などによると、ロシアやウズベキスタンでは同組織関連の学校が捜査されている。
エデユケーション社のトルコ人取締役は「社長(レジュプ紙)は米国にいて不在。国際交流学級は前大使に紹介されただけ」と話した。ファトウッラージュとの関連については「社長は(その団体を)好きかもしれないが、法人とは無関係」と強調した。
一方、この学校法人を区に紹介したとされるトルコ大使は「(ホライゾン学園を選んだ経緯などについては)前大使時代なので分からない」とコメントしなかった。ただ、同国関係者の一人は「前大使は当時のアブドラ・ギュル外相(現大統領)と懇意で、ギュル氏はファトウッラージュとの関係が深い。彼が今年、検察に訴追された理由の一つは同団体に対する外相時代の便宜供与だった」と漏らした。トルコのこの団体はが危険な存在なのか否かは別として、祖国でしばしば物議を醸している団体であることは間違いない。
住民側原告団長の久保田正尚氏は「問題の背景には桑原区長の独断専行がある。異常事態を一日も早く解消してほしい」と訴える。第一回口頭弁論は12月5日に東京地裁で開かれる。
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